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6-1-2 屋内の水平移動

 屋内移動は同一階の水平面の移動と,1階と2階など,垂直移動の動線を考慮する必要があります.ここでは同一階内の水平移動について述べます.
 同一階内での動線確保で考慮すべき点は次の二つあります.

1)数センチ程度の段差の乗り越え

 どこかでも述べましたが,段差をなくすことを意図して設計しない限り,屋内には多数の段差があります.わずか数ミリでも乗り心地を悪くします.同一階内での動線の確保には,数センチの段差の乗り越えをクリアする必要があります.
 2,3センチ程度であれば,下の図の左側のようなくさび状のスロープを設置することで乗り越えることができます.既製品もありますが,板を自分で削っても用は足ります.

 4,5センチになりますと,下の右側の図のようにスロープを長くしませんと乗り越えるのに力を要します.家の中では長いスロープを設置するには何かと問題を起こします.また,スロープが長くなりますと車いすが回り込むスペースを確保できなくなることもあります.
 角度がきつくなりましても,介助者の負担は短時間ですから短いくさび状のスロープを使用することが実用的と思われます.ただし,介助者の負担を軽減するために,車いすに勢いをつけて乗り越えることは大きな振動を生じますので避けるべきです.
 あるいは,スロープを使用せずに,車いすの前輪を持ち上げて乗り越える方法もあります.乗り越えかたは「選び方・使い方」編の3-10-4を参照してください.

スロープの模式図

2)幅・方向転換スペースの確保

 車いすの幅はJIS規格で70 cm以下と決められています.大体の車いすの幅は60 cm程度です.日本家屋の場合,壁や柱の中心間距離は90 cmが基準となりますので,通路や出入り口は80 cm前後あります.数字だけを見ますと容易にクリアできそうですが,実際にはこの寸法を確保できない場合があります.
 自力で車いすをこぐ場合,腕が車いすの幅からはみ出します.介助で移動する場合は,ほぼ車いすの幅が最大幅と考えてかまいません.
 屋内を移動するとき,幅に関して障害となるものにドアがあります.ドアを除くと80 cm程度の幅を確保できても,ドアの厚さ,開き角度によりかなり狭くなります.また,ドアノブも障害となります.車いすの動線を確保するために,ドアを引き戸に変更することを必要とする場合もあります.もっとも,ドアノブよりドアの開閉スペースの確保,車いす上での開閉操作のほうがより大きな問題となります.
 車いす使用者が,自力でドアを開きそこを通過することはかなり難しい動作です.介助の場合でも,介助者一人でドアを開き,車いすを押して通過することには困難さがあります.
 ドアを引き戸に変えますと,スペースの面と,操作の両面で効果があります.場合によりましては,ドアをはずし,引き戸ではなく,カーテンで代用することも考えられます.
 廊下などの通路から,真っ直ぐに部屋に入ることは比較的容易ですが,通路の左右に部屋がある場合,曲がるスペースが必要となります.このスペースの確保が意外と見落とされます.
 通り抜けのスペースや,曲がるスペースが確保できない場合,車いすを変更することも一つの方法です.「福祉機器とは」編で紹介しています6輪車いすのように,屋内の狭いスペースで回転できる車いすが工夫されています.ただし,膝を大きく曲げて座ることで車いすの前後長を短くしている関係から,座位に多少の制約があります.
 また,携帯用の小型車いすを使用する選択もあります.小型を優先するならば,入浴に使用するシャワーキャリーという機器があります.これはいすに車輪が付いた形状をしていますので,屋内用の小型車いすとして使用することもできます.これらは座位保持が可能な人に限られます.また,車輪が小さいのでできるだけ段差のない動線を確保する必要があります.
 座位保持機能を有する車いすは大型になりますので,この種の車いすを使用する場合には標準型の車いすよりも広いスペースがありませんと動線を確保できません.特に回転スペースを必要とします.

 屋内はスペースが限られますので,車いすの動線を確保することが難しい場合があります.建物の改造なども考慮に入れて検討する必要があります.


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