ナビゲーションを読み飛ばす
トップ 福祉機器とは 選び方・使い方 資料 コラム 庭の四季 道路の四季 リンク

5-4 運転に必要な身体的条件 ~身体状況と選ぶポイント~

 電動三・四輪車は主に高齢者を対象とした移動機器ですが,誰でもが使用可能というわけではありません.運転には以下に述べるような身体的条件が必要です.

1)理解力・判断力があること

 電動三・四輪車の操作を理解できることだけでなく,交通規則を理解できること,また,人や車の状況を判断し,道路上の危険を察知する能力も必要です.

2)自立歩行が少しは行えること

 電動三・四輪車を利用するためには,多少の自立歩行ができることが必要です.例えば,屋内から電動三・四輪車の保管場所まで,あるいはその逆で,最低でも杖による自立した歩行が求められます.電動三・四輪車で移動した先でも通常は歩行が必要となります.電動三・四輪車に乗ったまま内部まで入れる建物はそう多くありません.なお,杖ホルダーを多くの機種がオプションとして用意しています.杖歩行の人は機種決定の前にこの点を確認する必要があります.
 歩行が困難な場合には,電動三・四輪車への乗降が問題になります.屋内から,あるいは屋内で直接乗降できるようになっていれば問題はありませんが,保管場所が離れている場合には何らかの移動及び移乗の手段が別に必要となります.歩行が困難な場合には,屋内外で走行することを想定している電動車いすをお勧めします.

 

(ご注意)

 以上は,電動三・四輪車は自転車と同様な使用環境下にあるとの前提で述べています.この点につきましては異論があると思いますし,もう少し述べる必要もありますので,こちらをご覧下さい.

3)着座姿勢を維持できること

 電動三・四輪車には肘掛けは付いていますが,体幹を保持する装置は付いておりません.発進や停止の時,走行中は路面の凹凸や遠心力により体幹がいろいろな方向に振られます.そのような状況でも着座姿勢を維持できることが必要です.

4)腕の力があること

 ハンドル操作には多少の腕の力を必要とします.特に狭いところでの方向転換の時に必要となります.最もハンドルが重くなる停車状態で,ハンドルを一杯に切ることができれば問題はありません.
 ハンドルを回すときの力は,ハンドルをつかむ位置に影響を受けます.ハンドルが小さく,ハンドルの回転中心から近い位置をつかむと大きな力を必要とします.遠くをつかむとそれだけ小さい力で操作できますが,操作量が大きくなります.また,四輪タイプより三輪タイプの方が操作力は小さくてすみます.上肢の状況を考慮して選択してください.

 急ブレーキをかけたときには体が前方へ押し出されます.この時にハンドルで上体を支え,姿勢を崩さないようにする腕の力が必要です.
 なお,ハンドルは原則として両手操作ですが,片手でもハンドルが左右一杯に切れれば運転できます.

5) 指に一定程度の動きと持久力あること

 走行は指でアクセルレバーを操作しますが,走行中は操作位置を維持し続けなければなりません.アクセルレバーから手を離しますと,ばねの力により元の位置まで戻り,停止します.従って,ばねの力にうち勝ってアクセルを操作するだけの指の力が必要です.また,その状態を維持できるだけの持久力も必要です.10分間移動するためには,10分間その力を出し続けなければなりません.
  アクセルレバーの構造によりましては,両手の指を必要とします.片手で走行するのか,両手で走行するのかにより選択できるアクセルレバーの構造に制限があります.機種を選択する前には,アクセルレバーの構造を確認し,できればばねの力や操作量を確認してください.

6)視覚・聴覚で周囲の安全確認が行えること

 電動三・四輪車を運転する場合に必要となる最低視力は規定されておりませんが,周囲の安全確認が行えるだけの視力は必要です.ちなみに,50 cc以下のオートバイなどの運転免許の場合,両眼で0.5以上の視力が求められます.片方の視力が失われている場合,残った目の視力が0.5以上,視角が150゜以上であることが求められます.なお,視力はメガネなどにより矯正した視力でかまいません.
 電動三・四輪車の場合,速度が遅い分これらより条件が悪くとも運転は可能ですが,視力は高いに越したことはありません.
 視力の他に,首を回したりして左右,あるいは後方の安全確認が行えることも必要です.
 脳卒中の後遺症などで空間認識に障害がありますと,安全上問題となります.
 安全確認のためには,視覚だけでなく聴覚も大きな役割を果たします.ただし,聴覚は必要不可欠な機能ではありません.聴覚が衰えている場合,視覚によりカバーします.

 以上の他に,
   危険回避などで,素早い反応ができること
を付け加えたいと思います.高齢になりますと,反応速度が低下します.合図があったら手を挙げる,という反応時間を測定しますと,若い頃の倍,あるいはそれ以上の時間を要します.往々にしてこのことを自覚していない人がいます.

 5-0で述べたことの繰り返しになりますが,自立した移動が可能なことは社会生活を送る上で大きな意味を持ちます.移動手段を確保しないと生活が成り立たないという切実な場合があることも認めます.しかしながら,無理をしてまで電動三・四輪車を使用することはお勧めできません.電動三・四輪車の使用には使用者自身だけでなく,周囲へ及ぼす危険が伴います.そのため,選ばないという判断も時には必要なことを改めて指摘しておきます.


<<前のページへ 電動三・四輪車 次のページへ>>
「選び方・使い方」編の目次へ / トップページへ