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車いすの乗り心地は前輪の種類により全く異なります.この点をまず強調しておきます.
車いすの前輪は,下の左側に示します,硬質ゴム製のソリッドタイヤが一般に採用されています.ソリッドタイヤですと,走行時の振動が直接体に伝わり,乗り心地を非常に悪くしています.右側の写真は空気入りタイヤです.このタイヤですと走行時の振動が吸収されます.ソリッドタイヤの乗り心地とは全く異なります.
普段車いすを押している人は是非一度車いすに乗り,外を走行してみてください.屋内の平坦な場所では走行時の振動は気になりませんが,凹凸のある路面を走行したときの振動には驚かれると思います.押すときに手で振動を感じているとは思いますが,車いすに座って感じてください.特に,路面にブロックが埋め込まれている道路では,目地の部分で振動が激しくなります.最近は歩道に多く埋め込まれていますが,見た目には良くとも車いすには大敵です.
車いすの前輪を空気入りタイヤにしますと,劇的に改善されます.乗り心地を良くする効果には絶大なものがありますが,空気入りタイヤの前輪はオプションで用意されている機種がほとんどです.恐らく,ほとんどの方はこの種のタイヤがあることの説明も受けずに入手しているのではないかと思います.その原因は,空気入りの前輪タイヤにはいくつかの欠点があるためです.
以下にその欠点を列挙しますが,その欠点を認識した上で試してみることをお勧めします.
時々空気入れで空気を補給する必要があります.ところが車輪が寸法的に小さいため,写真の円内にあります,空気取り入れ口周辺にスペース的な余裕がなく,空気入れとの接続が簡単にはできません.また,頻度は低いもののパンクの可能性もあります.
タイヤに弾力があるため接地面積が増えます.そのため転がり抵抗が大きくなり押すときの抵抗が増えます.一定の速度で走行しているときはそうでもありませんが,動き始めや,狭い場所でゆっくりと小回りする時に抵抗の大きさを感じます.空気圧が低下しますとより抵抗が大きくなります.
走行抵抗の大きさによる取り回しの悪さが空気入りタイヤが避けられる原因といえます.
オプションとなっている原因の一つは高価であることもあります.約2倍の価格です.
寸法が大きいため,車いすへの乗り移りの時にじゃまになります.前輪は首振りを行いますが,この時に大きな回転スペースを確保する必要から,車いすの設計の面で影響を受けます.また,車いす全体の重量からしますと大した割合ではありませんが,ソリッド型に比べると重くなります.
最近は,ソリッドタイヤの手軽さと,空気入りタイヤの乗り心地の両立を目指した工夫がなされつつあります.一つの例を下に示します.写真の円内に弾性ゴムが挟まれており,ここで振動を吸収しようとしています.その他に,タイヤのゴム質を軟らかいものにする,金属製のばね,油圧による緩衝器などを採用している例もあります.
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