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3-8-3 空気圧調節式クッションの難しさ

 小さい空気袋を多数座面に配置し,袋の中の空気圧を調節する形式の車いす用クッションがあります.前のページでも述べましたが,この形式のクッションの効果は高いのですが,取り扱いが難しく,適切に使用しませんと期待する効果が得られません.

 下の左側にクッションの全景と,おおよそ大気圧程度の空気が入っている状態を示します.右側は,適当と考えられる程度に空気圧を調節したときの空気袋の状態を示します.空気が抜け,袋がつぶれていることがおわかりと思います.

クッション内部を示す写真     つぶれた空気袋を示す写真

 この形式のクッションの効果は,空気圧が減少するに従い大きくなり,ある限界を超えると急激に失われます.図に示しますと,下のようになります.下の図は実際の測定値ではありませんが,座圧と空気圧を同時に測定してこのような特徴があることは確認しています(注)

空気圧と効果の関係を示す模式図

 このクッションの調節手順は次のようになります.
  1)専用空気入れで空気を入れます.
  2)バルブを解放し,空気袋の中を大気圧にする.つまり,バルブを開け余分な空気を抜きます.
  3)大気圧になりましたら,バルブを閉めます.
  4)クッションに座り,少しずつ空気を抜きます.
  5)空気袋がつぶれ,クッションの底と臀部の間に指が2本はいるところでバルブを閉めます.
 指2本というのはメーカーの勧める目安です.

 上の図の時間変化は,青い線の右端から始まります.空気が抜けるに従い効果が徐々に高くなり,最適圧を境に急激に効果が失われます.メーカーの勧める目安よりももう少し空気を抜いたところに最適圧力があると思います.しかしながら,座圧計と,空気圧計があればぎりぎりの設定も可能でしょうが,何の測定器もない状態でぎりぎりまで設定することはリスクがあります.逆に空気を適当に抜きませんと所定の効果は得られません.メーカーがこのような測定器を用意しておりませんので,指先で判断できるように習熟する必要があります.
 この形式のクッションの効果は高いのですが,他の形式のクッションに比べ圧倒的に効果が高いわけでもありません.適切な使用が困難な場合には,他の形式のクッションを選択することも考慮すべきと思います.

 (注) このページで示しました特徴を確認した測定は,木之瀬 隆氏(当時東京都立保健科学大学),橋詰 努氏(当時東京都福祉機器総合センター)と共同で実施しました.


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