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車いすの座り心地は見落とされやすいポイントです.
車いすのシートに直接座っている例や,座布団を使用している例を多く見受けますが,基本的には座布団では役不足です.
自力で歩け,車いすを補助的にしか使用していない場合は,さほど気にしなくともよいのも事実です.座り心地はよくないのですが,身体状況からすると,耐えうる許容限界内にあるといえます.
移動を車いすに依存する割合が増え,座っている時間が増えてきましたら車いす用クッションの使用をお勧めします.車いす用クッションは「福祉機器とは」の章で紹介しますが,様々な種類があり,どれを選ぶかは悩ましいと言えます.
管理が不要なクッションは効果が低く,効果の高いクッションは初期設定と管理が難しいからです.
車いす用クッションの選び方を述べる前に,なぜクッションが必要なのかについて述べます.
座面が硬いと座っているときの圧力が高くなります.この圧力が限界を超えますと褥瘡(床ずれ)が起きます.褥瘡の原因は圧力だけではありませんが,最も大きな要因です.
座ったときの座面の圧力は,座面全体にまんべんなく分散しているわけではなく,下の図のように皮下組織が薄い部分に集中します.背もたれに寄りかからない姿勢では,骨盤の下端の2カ所に圧力が集中します.2-6で示しました図のように,背もたれに寄りかかりますと,尾骨の部分に集中します.
車いす用クッションは,圧力の分散を促し,最大値を低下させることにあります.
下の左側の図は,比較的薄いウレタンのクッションに座ったときの座圧分布を示します.メッシュ状の圧力センサで計測し,縦軸が圧力を示します.赤の矢印が座骨による圧力のピークを示します.青の矢印は,センサが折れ曲がったりしたためのノイズです.右側は,圧力分散効果の高いクッションに座ったときの圧力パターンです.ピーク値が下がっていることがわかります.
座布団は,つぶれたウレタンクッションと同じような状態ですので,圧力のピークは左側の図より遙かに高くなることが容易に予想されます.そのため,座布団ではなく,車いす用クッションの使用をお勧めします.
* 上のグラフは,木之瀬 隆氏(当時東京都立保健科学大学),橋詰 努氏(当時東京都福祉機器総合センター)と共同で測定したデータを元に作成したものです.
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