7-2-4 床走行リフトの選び方
前のページまでの理由で,床走行リフトは積極的に選択する対象ではないと述べています.経済的な理由や,住宅改修を行いたくない,あるいは行えないなど他に選択肢がない場合もあります.ここでは,選ぶときに考慮すべき点について述べます.
- 1.使用目的にあったタイプを選ぶこと
- 本ホームページでは,1種類しか床走行リフトを取り上げていませんが,このほかのタイプもあります.それらの中には,例えば,トイレでの介助がより行いやすい機種や,車いすに深く座らせることが容易な機種もあります.但し,ここで取り上げている形式以外の床走行リフトでは,主に懸吊方法,あるいは懸吊時の姿勢の関係から適応可能な身体的な制約が大きくなります.具体的には,比較的身体状況のよい人にしか使えません.
- 2.昇降は電動式を選ぶこと
- 床走行リフトの中には昇降を手動で行うタイプがあります.それだけ安価になります.
しかしながら,身体的負担を少しでも軽減するために,そして,ここで取り上げている形式では,車いすへ深く座らせる着地を可能とするために,電動昇降式を選択することをお勧めします.
- 3.ベッド下のスペースを確認すること
- ベッド下のスペースといいますのは,床走行リフトのベースが入り込むためのスペースのことです.ベッド下のスペースと,リフトのベース高さが規格化されていれば確認の必要はないのですが,現状では利用者が確認する必要があります.
- 4.転がり抵抗の小さい床面を確保すること
- 床走行リフトの車輪が小さいため,転がり抵抗が少しでも小さい床面の環境で使用する必要があります.硬い平面が最も適しています.床面の保護をしたいのであれば,できるだけ薄いシート状のものにします.重量により車輪が沈むと転がり抵抗が増大します.絨毯を敷いてある場合には操作が困難です.畳の場合は,板を敷くことをお勧めしますが,水平な面とすることができるか問題です.
畳の上に段ボールを敷いただけで操作性が向上すると言う人もいます.実際に比較したわけではありませんので,どの程度改善されるのか実感としてはわかりませんが,一つの対策として紹介します.
- 5.事前に十分練習すること
- リフトを使用する場合,吊具の着脱や,吊り上げ,着地などの練習をする必要がありますが,その他に,被介助者を吊った状態での移動,特に位置の微調整の方法を練習する必要があります.空荷ですと練習になりません.人を吊った状態での練習が必要です.
- 6.保管場所の確保すること
- 保管スペースは意外と広く必要とします.展示場など広い場所では床走行リフトをそう大きい機器とは感じないと思いますが,個人の住宅に持ち込んだ場合には非常に大きいと感じると思います.使用しないときは,部屋の中に保管しなければなりませんので,ベースの広さをよく確認して下さい.
床走行リフトは介護保険の対象となっていますので,様々な理由でこのタイプを選んだとしましても,不都合な点が許容できないと判断した場合には変更し直すことが容易です.