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7-2-3 床走行リフトの問題点2 ~介助動作に不都合があります~

 床走行リフトは,天井走行リフトと同じ吊具を使用しますので,吊具の選び方,着脱法は同じです.吊り上げ時,着地時の技術もほぼ共通します.大きく異なりますのは,吊り上げた後の水平移動です.
 天井走行リフトや壁面固定リフトでは,水平移動は,極端な表現ではなく指1本で可能です.実際の介助時には,被介助者の体に腕を回し,密着して水平移動を行います.この動作が床走行リフトでは全く異なります.

介助者の位置から見た床走行リフトと車いすの写真   横から見た床走行リフトと車いすの写真

 上の写真は,被介助者を吊り上げるとき,あるいはベッドや車いすへ着地するときの床走行リフトと車いすの位置関係を示します.上下動が電動であれば,介助者はスイッチを持って被介助者のそばに寄ることができますが,手動ですと,介助者は支柱の後ろ側で巻き上げの操作をすることになります.この間,介助者と被介助者の間に支柱が位置します.支柱を間に挟んだ状態がどのようなものかを,左側の写真から想像して下さい.介助者と被介助者の位置関係としては好ましいものではありません.

 このリフトで吊っているときの姿勢は,上体が多少,あるいは大きく後ろに傾きます.そのため,吊った状態から車いすへ着地する時に,車いすへ深く座らせるための操作が必要になります.この操作は,車いすの前後それぞれの方向から行う方法がありますが,いずれも被介助者のそばにいて,両手を,できればもう1本必要とします.手動で上下動をする場合には,この操作が行えません.とりあえず車いすの上に下ろしてから,深く座り直させます.座り直しの適切な技術を知りませんと,なかなかうまく座らせることができませんし,介助者の負担も大きくなります.

 電動式を選択すれば,吊り上げるときや着地するとき,被介助者に密着した位置で介助できますが,水平移動の間は,支柱を間に挟む位置関係となり,介助者は被介助者に密着することはできません.移動の開始時と,終了時にはどうしても被介助者の体が揺れます.方向転換の時も揺れることがあります.介助者がそばにいればこの揺れを押さえることができますが,床走行リフトでは自然に治まるのを待つしかありません.この揺れは被介助者に不安をもたらすだけでなく,安定性の低下も招きます.しかし,介助者と被介助者が離れていますので,揺れを押さえるために手を出すことができません.

 最後にもう一つ付け加えますと,床走行リフトを利用する場合,吊具の着脱は床走行リフトとは離れた位置で行います.そばでは床走行リフトの支柱やベースのために,介助しにくくなるためです.吊具を体の下に敷き込んでから,床走行リフトを移動してきます.吊具をハンガーに引っかける作業,あるいははずす作業は上の写真に示します位置関係の時に行います.この時,介助者の足場が確保しにくくなります.ベースに十分気をつけませんと,介助者の足が取られます.

 以上述べましたことは,天井走行リフトや,壁面固定のリフトでは起こりません.


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