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2-3-2 してはいけないこと -その1- 車いすの代用としないこと

 してはいけないことの第一にこのことを指摘しておきます.シルバーカーの,いすを後ろから押していく形態は車いすと同じですが,同じなのはここまでです.人が座った状態で押すことを想定して作ってはいません.想定外の使用には危険が伴います.事故は想定外のことが起こったとき,想定外の使用法がなされたときに発生します.シルバーカーで座ったまま移動することは想定外の使用法です.
 歩行車は人が座りますと簡単には押せない形状をしています.いろいろ工夫してなどとは考えないでください.
 歩行補助車で座るのは,あくまでも休息のためです.

 なぜしてはいけないのかその理由を2つあげます.
 最初に強度面です.SGマークのあるシールが貼ってある,製品安全協会の試験に合格したシルバーカーは,座面に150 kg力を作用させても耐えうるように作られています.歩行車は更に大きい力に耐えうると思われますが,規格があるかどうかわかりませんので,ここではシルバーカーについて述べます.
 150 kgはかなり大きい力ですが,できるだけ静かに1回作用させて異常がなければ合格です.1回では破損しなくとも,10回,あるいは100回では破損するかもしれません.複数回に耐えうることは保証していません.破損のしかたによりましては,転倒,あるいは座っている人が投げ出されないとも限りません.
 移動した場合,路面の凹凸で振動しますが,この振動は体に作用するだけでなく,シルバーカーにも作用します.振動の1回が負荷の1回です.そして,振動するとき,体重以上の力が作用します.路面状況によりましては体重の2倍程度になることも想定されます.
 ブロックを敷き詰めた歩道などを移動しますと,ブロック間の溝が原因で大きな振動が作用します.1メートルの間に2,30回作用すると予想されます.車いすのように,車輪で振動を吸収する機能がありませんので,簡単に破損に結びつくと予想されます.
 耐久試験を自分ではやっておりませんので,断定的なことは言えませんが,できるだけ静かに作用させた150 kgの強度を保障する内容であること,座っての移動を想定した設計となっていないことから,容易に予想されます.この点につきましては,別なページでもう少し述べていますので,そちらを参照してください.

 もう一つの理由は,フットレスト(足を乗せる台)がないということです.移動中に足が路面をこすらないよう足を持ち上げていなければなりません.移動中の振動に耐えて足を浮かし続けることはかなり筋力を必要とします.足先が路面に当たりましたらけがの原因になります.
 そもそも足を持ち上げ続けられるだけの筋力があるならば,シルバーカーを必要としないかもしれません.

 なお,このような使用を想定して,フットレストを有しているシルバーカーが出現しました.このような製品が出現することは,それだけニーズがあったことと思います.さらには,車いすのような使用をする人がそれだけ多いことも伺わせます.
 ニーズがあり,それに応える製品が世に出ることは好ましいことですが,実際の製品が車いすと同様の使用に耐えられることの保証がどの程度なされているかは疑問です.車いすにはISO規格やJIS規格があり,厳しい強度・耐久試験が課せられています.実際の製品に触れたことがありますが,車いすと同等の試験に耐えられるとは考えられませんでした.
 もっとも,車いすそのものではありませんので,同等の強度・耐久性を有する必要はありません.しかし,人を座らせて移動することを設計時から想定するのであれば,もう少し強度を持たせる必要があるのではないかという印象を持ちました.
 安易にこのタイプのシルバーカーが選択されることには危惧を覚えます.
 日常的に使用するというのであればお勧めできませんが,歩けなくなるという非常事態を想定して,選択するというのであればあえて止めることはしません.ここでいう非常事態といいますのは,全使用期間中に1回か2回というごく少数の限られた回数です.たとえ月に1回でも,繰り返すときは非常事態とは言えません.

 シルバーカーは押して歩くもので,押してもらうものではありません.


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