ことでん車両の基礎知識
高松琴平電気鉄道@エムサ菌総合研究所
つい何年か前まで、ことでんはさまざまな形式の車両を保有・運用し、『動く電車博物館』とも
言われてきました。 しかし相次ぐ冷房車の導入と旧型車の廃車によって車種が大幅に減り、往時
の豊富なバラエティはかなり失われましたが、今でもことでん車両群を語る上で『動く電車博物館』
当時のことは欠くことができないことだと思います。 このページでは、ことでん車両を眺める上での基礎知識のような能書きや、各形式に共通する ことなどを書き連ねてみようと思います。 |
▼ ▼ ▼
ことでんが車両を新たに導入する際、半ば伝統的に他社で使用された中古車両を譲り受ける
ことによって行われていました。 それは、琴平線の前身である琴平電鉄が開業の際に当時の最高水準の新車を揃えたことが、 後々まで経営に重くのしかかっていたからと言われています。 真偽の程は定かではありません が、現在のことでんが成立した1943年以降に在籍した自社発注車が15両しかなかったことからも、 現実味が高いように思えます。
譲受車が多いのは他の地方民鉄でも見られたことなのでそれほど珍しいことではありません
が、ことでんの場合は車両の規模が大きいことから全国の鉄道会社より譲り受けた車両が走る
こととなり、車両のバリエーションが実に豊富だったことが特徴として挙げられます。 |
+ + +
もうひとつ、『動く電車博物館』を盛り立てかつ電車好きの目を見張るのが、その雑多な
車両たちが、ラッシュ時ともなると相互に連結・協調して運転していたことです。 多種多様な車両を抱えることでんでは、車種の違いによる車両運用の硬直化を防ぐため、 形式の違いに関わらず制御・ブレーキ方式をほぼ完全に統一していました。 |
具体的には下記のとおりです。
マスターコントローラー ・・・ ウェスチングハウス社製の間接非自動式。
これらの装備によって、例えば手動加速車と自動加速車を混結している場合は手動加速車に
合わせてノッチを1段ずつ投入するといった制約があるものの、運用の共通化は図られてきま
した。 ただ、高性能車を譲り受けてもダイヤ上は旧型車のランカーブに合わせる必要がある
ため、スピードアップには必ずしもつながらないといった欠点がありました。 |
+ + +
そんなことでんの車両群も、他の鉄道会社と同様に近代化・冷房化の波がやってくるにつれて
車種が減っていくことになりました。
もともと鉄道線で車両規格の大きかった琴平線では、1970年代半ばより名古屋鉄道・阪神電気
鉄道・三岐鉄道から17〜19m級の「大型車」を旧性能車であったものの譲り受け、14〜16m級の
「中型車」を長尾線・志度線に転属させるなどして、車両の大型化を進めました。
一方の長尾線・志度線は、ともに前身が軌道線であることから寸法や重量の制限が特に厳しく、
『全長16m級・積載時軸重10トン』という両線の規格に適合する中古車両の供給が無かったため、
旧型非冷房車が使われ続けました。 2007年7月31日、長尾線に残っていた旧型車の増結運用がこの日の朝をもって終了したことで、 全線完全冷房化を達成しました。 |
▼ ▼ ▼
琴平線では、2011年12月1日現在1200形14両・1100形8両・1080形10両・1070形4両・600形4両の
5形式40両が在籍し、全ての形式が2両編成を組んでいます。 ラッシュ時には2組つないだ4両編成
も多く見られます。 運用上の制限などは特にないようですが、1070形や1100形の稼動機会は
少ないようです。 また動態保存されている非冷房旧型車4形式4両と、事業用車2形式2両も仏生山工場に常駐して います。 |
(依然として車両のバリエーションが富んでいる琴平線。)
+ + +
長尾線は、2006年7月から2007年7月にかけて3度にわたって大型車両が導入され、さらに2011年に
大型車の追加が行なわれた結果、2011年12月1日現在1300形8両・1200形8両・600形4両の3形式20両が
在籍しています。 大型車と中型車が混在していますが、志度線のような中型車の3両化は
行われず、全列車2両編成で運転されています。 2011年の大型車追加までは1300形4両・1200形6両・600形8両の計18両の陣容で中型車が相対的 に多く、沿線で大きなイベントがあった時など中型車では輸送力不足になりかつ長尾線所属の 大型車では運用を賄いきれない場合は、一時的に琴平線の大型車が長尾線運用に就くことも ありました。 |
(車両大型化に伴い「京急色」が強くなった長尾線。)
+ + +
志度線では、長尾線車両の大型化による中型車の転入を受けて残っていた非冷房車が引退、
600形・700形の2形式20両が在籍しており、名古屋市交通局出身車両で統一されました。 大型車が入っていないために志度線では3両編成運転が継続されていますが、増結車が単独で 自走できないこと、運用途中での連結・切り離しは行われていないため、終日にわたって3両編成 の列車が走るようになっています。 |
(1系列に車種が統一された志度線。)
▼ ▼ ▼
車両の向きについても、簡単な説明をしておこうと思います。 ただ、ことでんの公式な車両の向きは解からないので、もっとも普遍的と見られる方法で解釈し、 当サイトの記述もそれに則ったものとします。
まず路線の方向は、琴電琴平方面・長尾方面・志度方面に向かう列車が『下り』、瓦町・
高松築港方面に向かう列車が『上り』となります。 |
上図・志度線分断前は、線路配置の関係で高松築港に直通していた志度線列車が瓦町でスイッチ
バックして目的地に向かっていました。 車両の向きは、線路を共用する琴平線や検査設備を共用
する長尾線のそれと合わせており、従って志度線内では路線の向きと逆になっていました。 しかし、下図・志度線分断後は、車両の向きはそのままで、その後に入線した車両も分断前と 同じ向きとされたため、依然として車両と路線の上り下りは一致しておらず、ちょっと解かり にくくなっています。 |
パンタグラフの搭載位置は、旧型単車では下り方に、旧型ユニット車は奇数号車の運転台寄り
に、冷房車は奇数号車の連結面寄りに、それぞれ搭載されるのが通例になっています。
ただし、5000形・60形62・60形67は旧型単車であっても上り方に搭載されており、それが何故
なのかは1000形の搭載位置が過去2度変わっていることとともに定かではありません。 ただし、
60形65が陸送によって仏生山に異動してきた際に、パンタグラフの向きが1000形などと同じに
なるように方向転換がされました (それに伴い床下のジャンパ栓の位置が左右
振り替えられた) 。 優先座席の位置は、ユニット車の場合は2両とも連結面側車端部両側にあります。 それ 以外の1両単位の車両は、下り方車端寄りのロングシートの一角にあったように記憶しています。 |
▼ ▼ ▼
▼ ▼ ▼
2011.12.17 エムサ菌