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(資料5)

電動ベッドによる事故報道


○ 2008.2.15 電動ベッドによる死傷事故

 電動ベッドの手すりが原因となる死傷事故が発生しているとの報道がありました.筆者は,読売新聞のインターネット記事,朝日新聞の東京版の記事を読みましたが,注意喚起の説明が不足していると思いましたので,このページで少し解説を加えることにしました.なお,事故の内容は新聞記事の範囲しか知りませんので,推測を含みます.
 記事の見出しは「てすり」に原因があるとして,内容は2種類の事故に触れていました.以下に,2件それぞれの原因についての筆者の見解を述べます.

1.落下防止「柵」が原因の事故

柵の隙間を示す写真  電動ベッドには落下防止の柵が左右2つずつ設置できるように作られています.介助の都合(介助者の身体的負担の軽減・腰痛予防),設置場所の都合などの理由がありますが,介護用のベッドは幅が狭く作られています.そのため,寝返りを打ったときに落下することを防ぐと共に,寝具が落ちることも防ぐ柵が必需品となります.ベッド上で体を起こすときに,この柵につかまり体を支えることも想定されます.
 今回問題となった部分は,図中の楕円で示した部分です.ここに挟まったものと思われますが,報道ではどちらか特定できません.
 記事では「手すりの隙間に手足や首を挟み」,「平成19年5月以降20年1月のまで間に5件発生し,3人亡くなった」と述べています.ベッド上で倒れた勢いで首などを挟んだことが原因であり,この隙間に詰め物をして防ぐように呼びかけています.
 「手すり」としていますが,恐らく落下防止の柵のことで,起き上がり動作の途中で体勢が崩れ首を挟むとすれば,図の右側の楕円で示しました,天板と柵の間の可能性が高いと思われます.
 筆者もこのような事故が起こるとは予想していませんでしたが,起こった以上対策が必要ですし,使用者に可能性を知らせる必要があると思います.また,メーカーは,何らかの対策を施す必要があると思われます.ただ,挟まないように幅を広げさえすればよい,という簡単なものではありません.天板と柵の間隔を広くしましても,背もたれを持ち上げますと,柵はフレームに固定されていますので,隙間が狭くなります.詰め物といいましても,軟らかければつぶれてしまい,現状と大差ないことになります.具体的な対策を提案できませんが,事故の可能性を認識し,ご注意下さい.

2.ロック機構の摩耗によるロックの外れが原因の事故

 記事では「手すりを固定する部品の摩耗が原因でロックがはずれ」事故が発生したと述べています.この内容では部品の詳細を知らない人にとっては具体的なことがわかりません.落下防止の柵を電動ベッドに取り付けるとき,ロック機構はありません・・・と書いてきましたが,このあたりの認識不足を追求しても始まりませんので,この事故の内容について見解を述べます.
 ベッドの柵には,立ち上がりや車いすへの移乗の補助機能を有する,下記の写真のようなものがあります.

柵の状態の写真 手すりの状態の写真 自力で移乗するときの車いすと手すりの位置関係を示す写真

 写真左は柵として使用しているときの状態,真ん中は手すりとして使うときの状態を示します.右の写真は車いすへの移乗を想定した使い方を示しています.詳しくはこちらのページを参照してください.
 問題となったロックといいますのは,写真の左の状態,あるいは真ん中と右側のように途中で折り曲げた状態を保つために設けられています.報道の事故は,恐らく,折り曲げた状態にしてつかまり立ちしようとしたときにロックがはずれ,転倒し,負傷したものと思われます.
 途中で折り曲がり,手すりの機能を有する柵は各電動ベッドメーカーから出ていますが,記事のものは,パラマウントベッド製のものらしく,同社では無償で部品を交換するとのことです.詳細は同社のホームページで確認してください.他のメーカー製では問題がないのかどうか確認はしておりませんので,お使いのメーカーのホームページなどでご確認下さい.
 なお,部品が摩耗していなくとも,ロック操作が不完全ですと,はずれる可能性があります.使用時には操作を確実に行うようご注意下さい.


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