1-3 杖をつくときの注意 ~杖は真っ直ぐに~
左の図はT字杖のつき方を示します.
T字杖は一番左に示しますように,支柱を真っ直ぐに立て,真上から力を掛けたときが最も安定します.
T字杖には1-1で述べましたように,持ちにくさがあります.そのため,持ちやすさから前後を逆にして持っている人がいます.しかし,このように持ちますと,杖を真っ直ぐに立てて力を掛けることができません.左の中央の図のように,支柱を真っ直ぐに立てて力を掛けますと,赤の矢印で示しましたように杖が回転しようとしますので,安定して杖で体を支えられなくなります.
右側の図のように支柱を斜めにし,杖の先端が地面と接する点の真上から力が作用するようにしますと,力学的にはバランスが取れます.
しかしながら,杖の先端は支柱が斜めになることに十分には対応できません.具体的には滑りやすくなります.杖を使っていて,一番危険なことは先端が滑ることです.
杖の先端には通常杖先ゴムがはめ込まれています.ゴム製品であるため,杖をついたときに多少変形しますし,摩擦も大きいのですが,基本的には真っ直ぐにつくことを前提にしています.これは,前後を正しく持ったときにも言えます.前後を正しく持っても,杖を斜めに前へ出して接地しますと上の右側の図と同じことになります.
しかしながら,杖を真っ直ぐにつくことはなかなか難しく,意識しましても実際には斜めにつくことになります.また,ロフストランドクラッチ,ここでは取り上げていませんが松葉杖などは斜めについて体を支えます.そのため,先ゴム以上に効果が高く,安定性を確保するための工夫がされていますが,決定的な方法はありません.各種の工夫につきましては,次ページで述べます(未制作です.申し訳ありません).