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10-8 今後の課題

 各種の歩行分析や,短下肢装具の特性の計測などにより,かかとが接地した直後に,短下肢装具により底屈に適切な抵抗を与え,背屈筋の補助とすることにより片麻痺者の歩行を改善できることがわかりました.筆者らはここで紹介しましたDACS AFOという短下肢装具を開発し,この考え方の妥当性を確認しました.
 開発後約10年以上にになりますが,この考え方を否定する,あるいは超える考え方はまだ出ていないと思います.確定的なことを言えないのは,筆者が研究活動から離れてしまい,情報不足になっているためです.考え方はよかったのですが,DACS AFOは当時期待したほど,現実には全くといえるほど普及しておりません.
 高価であること,製作法が難しいこと,装着後歩き方を変えるための訓練を必要とすること,ばねの選択や,初期屈曲角度の調節にノウハウが必要なことなど,装着者,製作者,訓練者に負担が増えます.また,下腿部の後ろに取り付けていますので,階段を下りるときに力源ユニットの収納スペースが邪魔になります.特に,階段の奥行が狭い場合には足を置くスペースが確保できなくなります.このようなマイナス要因があるにしましても,もう少し普及してほしいと残念に思っています.
 その一方,開発者がこのようなことを述べてはいけないと思いますが,DACS AFOはメカニズムとしてはこなれておりません.これは筆者だけの思いではなく,チーム解散後,二人が独自のメカニズムで次世代モデルの開発を試み,それなりの結果を出していることにも表れています.

 DACS AFOの開発でし残したと筆者が考えていることをまとめますと次のようになります.

背屈補助モーメントのグラフ

 左の図は,底屈角度と背屈補助モーメントの関係を示します.赤の線は直線的に増加していく場合を示しています.Bは計算上のDACS AFOの出力です.前のページに測定値を示していますが,直線でも,計算上の曲線でもありません.とはいえ,直線に近いといえば近いと言える特性を示しています.
 筆者らの研究では,角度と背屈補助モーメントの関係がどのようになるとより好ましいのかは解明しておりません.AやDの曲線で示した特性の方が好ましい可能性もあります.



力源の位置を示す図

 次は力源ユニットの位置です.DACS AFOはかかとの後ろに配置しました.足継手軸から大きく離すことにより背屈補助モーメントを確保したためです.距離を半分にしますと,力源の出力は2倍必要になります.赤の円で示しましたように,2個配置しますと,DACS AFOと同じ出力のばねを使用できます.ただし,ばねの圧縮量が半分になりますので,より強いばねが必要になります.



足継手に力源ユニットを組み込んだ短下肢装具

 左の写真は,足継手の軸に力源を配置した例です.DACS AFOに先行して開発を試みた形式です.寸法の上限を決めて,その中に背屈補助モーメントを発生させる機構部を組み込みました.残念ながら出力は3 Nmにしか達せず,実用化のめどが立ちませんでした.しかし,この位置に配置しますと,装着者の下肢の寸法の影響は受けません.
 この試作品の場合,力源ユニットを2個使用しますので,片方で最大10 Nmの出力が求められます.ばねによる力の作用する位置は,軸から15 mm程度でしたので,ばねの出力は667 N(68 kg)必要となります.
 この値は非常に大きなもので,画期的なばね材や,構造を開発する必要があります.しかし,筆者は,今もってこの形状が好ましいと思っています.



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