１０－１　DACS AFOとは

　脳卒中の後遺症で麻痺が残ったといいましても，歩行補助を必要としない人から，自力歩行ができず，車いすを必要とする人まで，状態は様々です．多くは短下肢装具により自力歩行を行います．

　DACS AFO（ダックス・エーエフオー）は脳卒中の後遺症による片麻痺者を対象として開発された背屈補助付き短下肢装具です．左に外観の写真を示します．短下肢装具についてご存じない方のために説明しますと，この装具は膝の下の部分に，下腿部の後ろから足底部を覆って装着します．装具の後部にあるふくらみの中に，ばねを収納している力源ユニットが取り付けられています．このばねがDACS AFOの心臓部です．
　DACS AFOは，写真の状態から下腿部が前へ屈曲（背屈）するときは抵抗がなく軽く動き，後ろへ伸展（底屈）するするときに，ばねによる大きな抵抗が作用します．後ろへ動くときにのみ背屈補助として抵抗が作用する，これがDACS AFOの基本機能です．

　DACS AFOは，足底から下腿部の後ろを覆いますが，この形状から，足関節の安定性を向上させることを目的とする装具であると予測できると思います．しかしながら，DACS AFOは歩行時の足関節の動きをコントロールすることにより，膝関節の負担を軽減し，安定性を向上させる機能を有しています．下腿部の後方に配置したばねが適切に働くことによりこの機能を実現しています．DACS AFO以前の短下肢装具は足関節にのみ着目しており，膝関節に着目する視点はありませんでした．ここにDACS AFOの機能上の大きな特徴があります．