猛暑の西日本を縦断! 2007年夏の18きっぷ旅



2007年8月19日 (4日目)


今日は松江始発のトロッコ列車「奥出雲おろち号」に乗車の日。
旅において早起きは基本なのですが、列車が出る時間は8時50分。旅の最中にしてはちょっと寝坊の7時起床です。
宿を出る支度をして、半頃に朝食へと向かう。

そう、私にしては珍しく、朝食つきプランなのです。
朝食付きでも宿泊費が2625円、超激安です。健康ランドの仮眠室を利用するより得かもしれない。


朝食のチケットを持って一階に降りるものの、フロントは無人。喫茶店代わりのラウンジはシャッターが閉まっている。


『ラウンジ以外に食事場所ったって無いし、どこでメシ食えるんだろう…』


誰もいない一階で不審者の如くオロオロしている自分がいた。
ゆうべ、ホテルのフロントでチェックインするときの説明、早口で全然理解出来てないからメシの出る場所がわからん。


『そういえば、向こうの出口から出て何とかかんとか言ってたよな。』


通路の奥にある非常口をそっと開けると、そこにはお隣りの鶴屋旅館らしき建物の裏口があり、その隣りには開けっ放しの厨房の裏口が見えた。そこからはゴトゴトと音が聞こえて、朝ごはんの味噌汁の匂いがプーンと香る。


『まさか…なあ…』


かなり躊躇ったものの、このままでは埒が明かないので、おそ〜るおそる扉を開けると、何やらそこはホテルのフロント。鶴屋旅館さんの建物らしい。
奥の部屋には食堂があって朝食が並び、奥には旅のグループっぽい若い男女が座って食事をとっていた。
その様子を見ていると、優しそうな顔のおばあちゃんが厨房からヒョッコリ顔を出した。


「おはようございます」

「あ、あの朝食…を…」


試しにチケットを見せてみた。

するとすんなり奥のテーブルに通された。どうやら朝食の場所はここで正解のようだった。それにしても、宿泊場所と別の旅館で朝食だなんて初めて聞くな。ともあれホッとして奥の一人分のおかずが並ぶ席に座った。
見ると、殆どの席がグループ席。一人旅で来てるのは俺くらいなのかな…



ふとテレビを見上げると、そこには欽ちゃんの汗だくの姿。
24時間テレビが映っているらしい。

やがて出てきた主食のごはんは、茶碗4、5杯はありそうな量。
全部頂きましたよ、ええ。何てったって昨日あれだけの旅をして、食べたのは亀嵩のそば一杯と、350円の赤飯、出雲坂根の水だけです。普段の半分の量だ。ハラペコもいいところだった。

メニューは、のりに目玉焼き、シオジャケにお茶、しじみの味噌汁という、日本らしいオーソドックスな和食の定番の数々。
しじみの味噌汁はいかにも松江に来たという風情があってグッドです。



綺麗にペロリと平らげたあと、丁寧におばあちゃんにお礼を言って部屋に戻り、ハミガキを済ませて鍵を持ち、チェックアウトのためにフロントへと向かった。

しかし、フロントには誰も居ない。

ふと見ると、フロントのすぐそばにあるたばこの自動販売機の上に鍵がたくさん放り上げてあるのが見える。
早朝にホテルを出た人が置いたものかもしれない。

こんなところに鍵を置いて出て行けなんて言ってたっけ?
もしかしたら、これがこのホテルの暗黙のルールなのだろうか。

フロントは無人だし、管理人に繋がるインターホンもないから考えていてもしょうがない。私も同じところに鍵を置き、さっきの非常口からホテルを出ることにしました。




昨夜は河に映ったネオンが綺麗だった水辺も、陽が登ればこの通り。
ちょっと和を感じる橋が架かってる以外はごく普通の街並みかな。

時刻は8時15分をちょっと過ぎています。
時間はあるので歩いて松江駅へ行きますが、日差しが強く、早くも暑い。気温がグングン上がっているのがわかります。

バス停もありますし、本数もあるので乗っていきたいところですが、我慢我慢。




松江駅には30分ごろには到着。
この時間になればバスもタクシーも見掛けます。

石見銀山の世界遺産登録の垂れ幕を見ると、島根にいるという実感が湧きますね。

ここからそう遠くはないし、行けたら行きたかったんですが、5日以内に予定した場所を全て周るには石見銀山は距離的に無理があって、入れる訳には行きませんでした。

もっと列車のダイヤが便利って言うなら話は別なんですけど。




ホームに向かうと、既に列車が入線。
んーーー、出来たら列車がホームに入線してくるシーンが撮りたかったな。

実はJRのジョイフルトレインに乗車するのは今日が初めて。
1ヶ月近く前から座席の指定を取って、待ちに待った時が訪れました。今回の旅のメインが、この「奥出雲おろち号」の乗車です。

では、いよいよ乗車します。



これは、トロッコ車両とは別に連結されている2号車。普通車自由席です。
車両は急行型の12系客車、座席は簡易リクライニングシート。数少ないいまどきの12系座席車の標準的な設備ですね。
デッキもあるし、周辺を走る普通列車と比べても、旅の利用には最適と言えます。

車内はややリニューアルを受けていますが、雰囲気は国鉄当時そのまま。旅情を誘います。



窓は2段式ユニット窓で、開閉可能ですが、冷房が効いてますので開ける訳にはいきませんね。
座席には小さなテーブルもあります。
テーブルはいまどき珍しい木製ですよ。




一方、こちらは1号車。全車指定のトロッコ車両です。
但し、木次までは普通車自由席として開放されていて、誰でも乗車出来ます。
窓の部分は大胆に取り外されていて、開放感たっぷり。座席は雰囲気ある木製です。

車両は12系客車ですが、先頭部分に運転台が取り付けられているという変り種です。

これにより、終点での折り返し運転を容易にしようという狙いがあるんでしょうね。



車内にはジュースの自動販売機もあります。
お値段は120円の缶ジュースと、150円のペットボトル。
お値段高めが当たり前の車内販売としては、まあまあ良心価格の部類です。



各座席に置かれたテーブルには、ジュースを置くためのホルダーがあります。

トロッコ車内は風通しが良過ぎるため、ここでお弁当などを食べていると容器ごと吹き飛ばされます。
せっかく大きなテーブルもありますが、食事の時は窓のある2号車に移るほうが得策かな。




車内には、龍と櫛稲田姫とスサノオノミコトのかわいいイラストが、車両のいたるところで見受けられます。
駅に掲げられたイラストなども含め、これら木次線神話のデザインは、島根デザイン専門学校の生徒の作品だということです。
それだけでなく、列車のデザインなども手掛けたというのだから凄い!




プシュ〜ッ…発車しまーす。
12系客車は折り戸式扉を採用。寝台特急などと一緒です。
ムーンライト高知もこういう折り戸でした。

ちょっとワクワク…



松江〜宍道までは本線区間で、結構スピードを出しての運転です。
松江までのお出迎え運転のある時は、このスピード感が味わえるって訳ですね。

トロッコ車に乗ると凄い風で、髪の長い人は大変なことになりますよ。



途中、宍道湖が見えたり、国道で自家用車と競争したりと楽しい車窓が続きます。
奥出雲おろち号に乗るなら座席は日本海側を選んで座ること。
太平洋側より圧倒的に車窓が変化に富んでて楽しいです。




宍道駅でキハ187系を発見!
黄色い車体に切り妻顔。
一応これは特急列車だけど、見掛けはまるで試験車!


「奥出雲おろち号」は、ここから木次線へと入っていきます。




木次では売り子さんが乗車。思ったとおり、車内販売が始まった。
くっはーーーッ、クッソーうまそうだなあ…。俺はそんなことでアッサリ財布の紐を緩めたりはしないぞ!

ゴクッ…



出雲三成(だったかな?)から、更に弁当屋さんが乗車。

売っていたのは牛肉が載ったお弁当。「仁多牛べんとう」
竹葉さんというところで販売しているようです。

但し、駅売りは無く、車内販売のみ。結構評判なようですが、私は買っていません…
姫とうふ一本勝負を決めてますので。



車掌さんも楽しそうです。
ご覧の通り、先頭の展望はなかなか良く、ここに立って前面展望を「かぶりつき」で楽しむ人は多かった。


しかし…

「そこに立たれたら前が見えんやんけ!」

と噛み付くオッサンが一名。
そんな苦情を受け、しぶしぶ車掌がかぶりつき客をやんわり注意する一幕もあった。

そのオッサンも、見所のスイッチバックでは前面展望を「かぶりつき」で見てたんですがね…。



亀嵩駅では「そば弁当」の立ち売り販売。窓ごしに直接とは粋ですよね。
ちょっぴり昭和の香りがします。

但し予約制なのだとか。

でも「おそばはいかがですか〜」と、直売りもありましたよ。予約キャンセル品でしょうか。不定期でそういうこともやるんですね。


ちなみに八川駅でも同様に、窓越しにそばの販売が行われます。
恐らくこちらも予約制だろうな…。




出雲横田では弁当の搬入。
大口の予約のようです。重そうだ〜…


しかし、肝心の「姫とうふ」ワゴンが来ない…

昨日は乗って、今日はお休みですか?
そんなぁ(泣)

楽しみにしてたのになあ…



ん? 出雲横田で眼鏡をした若い女性が乗ってきました。
何か車掌さんと打ち合わせをしています。


実はこの方、ボランティアの観光ガイド。今日が初めての体験だそうです。
思いがけないサプライズ。 JRもなかなか粋なことしてくれますね。


車掌さんを見ていると、車窓風景を手本に何やら詳しい沿線ガイドを教え込もうとしているのが伺えます(笑)




出雲坂根のスイッチバックでは当然、お客さん総立ち状態。

ロクに写真も撮れない状態だったのですが、その熱気も冷め止まないうちに今度はおろちループの見えるポイントに。
目も眩む絶景を、列車は速度を落としてゆっくりと進んでいきます。

カメラのシャッターを押す人、ビデオカメラを廻す人が一斉に車窓右側に集まり、列車が傾くんじゃないかと思えるほど。
やっぱり窓ガラスが無いと眺めが違いますね。


ここらへんは見所が次々ですので、ガイドする側も大変そうです。
しかも今日が初めてというガイドさんですし(^_^;)


このループ橋は、蛇がトグロを巻いているイメージを基にしているそうです。




ループ橋のすぐ脇には「道の駅」があるのが見えます。
三井野原駅から歩くい10分程度なのだそうだ。

今回行くのは無理ですが、今度訪問する機会があったら是非行ってみたいです。




目も眩むような赤い橋です。


この国道が出来たことで廃線の危機に立たされた木次線ですが、逆にこの道路が出来たことを逆手に取って、観光列車として走らせたのが「おろち号」なのだそうだ。

この橋が無かった頃の木次線の風景ってどんなだったのだろう。


確かに列車からの眺めはいいし、みんな大絶景に歓声を挙げているものの、限られた山陰の大自然を幾つも犠牲にした上でこの風景が成り立っていることだけは決して忘れてはいけないように思う。




850に松江を出発した奥出雲おろち号は、12時過ぎに備後落合に到着。

しかし、ここで降りるお客さんは殆ど無し。
一旦待合室や駅前で時間を潰すと、折り返しのおろち号にほぼ同じ面子が乗車します。


うーーーん、駅前にはこれと言った景勝地もなし、のりかえ列車もなしだからやむを得ないと言ってしまえばそれまでだけど、これでいいのかな(笑)


もうちょっとダイヤを何とかしてもらいたいね。




こんどは進行方向が変わるので、DE15ディーゼル機関車が先頭となります。
転車台なんていまどき無いので、12系客車に運転台を取り付けた成果がここで発揮されるわけですね。


いっそのこと転車台を復活させれば観光の目玉になっただろうになあ…


出発は1229です。行きも帰りも座席が太平洋側だったらどうしようかと思いましたが、幸い今度は座席が眺めのいい日本海側となりました。行きに人垣で見れなかった風景を堪能する大チャンスです。

それにしても列車が停まっているとメチャクチャ暑い…
早く走ってくれ〜



備後落合から2駅目の三井野原駅。
ここで途中下車していく方が結構多かった。やっぱりおろちループと道の駅効果は大きいようですね。

帰りは1410の出雲横田行きにスイッチという訳か…。賢い選択かもしれません。
私もお仲間になりたかったけど、せっかく取った指定席だしなあ…

いくら暑くても1020円ぶん堪能しなくちゃここを離れて冷房の効いた普通車に移ることなんて出来ませんね。




コトコトと列車は坂を下っていき、スイッチバックの出雲坂根へ。
ちょっとテスト撮影…

今度はいい席だからバッチリ撮れそうです。




林の間から出雲坂根駅を激写!
駅舎とホームがチラッと見えますよね。駅は遥か真下です。

凄い標高差を列車が下っているのがよくわかりますよ。

昔はスイッチバックを駆使してこの坂を蒸気機関車で往来していたんですから、その苦労は計り知れないでしょう。




だんだんスイッチバックのポイントが近づいてまいりました。
あんなに遠かった線路がこんなに近くに!

この様子をリアルタイムに車窓から眺めるのはなかなか面白いですぞ!
今でこそ観光の目玉ですが、昔はこんな車窓を普通に眺めながら鉄道の旅をしてきたんですねぇ…




スイッチバックして出雲坂根駅に着く頃にはもう全員総立ち状態(^^;)

私も空のペットポトルを用意して降りる準備です。

何をするのかって…水を汲むに決まってるでしょ!
私にとって今回の旅でここの水が飲める最後のチャンスですし…


へへへ〜〜ッ!

これで今日一日ジュース代はいらねーな! 結構結構!


でもね、これがアッという間に無くなるんだな。
冬ならペットボトル一本の水で一日持つんだろうけど。




ん? 列車の中に記念スタンプと、旅ノートがあります。
まだ交換したばかりなのか、ノートにはあまり加入されたコメントは無いですね。
つか列車が揺れて字が書きにくいねん…

記念にノートに一筆と、もちろんスタンプも押してきました。



列車は出雲横田へ。
さすがにこの時間になると、列車走行中もあまり涼しさが感じられないっス。

生暖かい風と、時々熱風が頬を叩く…
この暑さ、異常やねん。


おろちループとスイッチバックを過ぎてしまうと、この暑さに耐えかねて普通車に逃げ込む客もポツポツ…
爆睡してる人もいます。



4日目その2へつづく…

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