命懸けの峠越え

2005年04月09日(土)

いよいよ明日で18きっぷの期限が切れる。もうじゅうぶんモトはとったけれど、二回分も残して捨ててしまうのももったいない。最後にドコに行こうかと、時刻表の索引地図を眺めていました。
そして、手軽に行けそうな候補に挙がったのが次のとおり。

わたらせ渓谷鉄道→銅山跡→旧谷中村(前から鉱毒事件に興味があった)

大井川鉄道→井川線(前回行きそびれた終点へ)

焼津→大崩海岸(美少女の霊が出るとか出ないとか…(笑))

たまたまこの日、インターネットで心霊関係のホームページを見ていた関係で妙にそのテの場所に興味が沸き、すぐに電車で行けそうな場所で、そんなスポットがないかと探していたら「笹子峠」があった。確かにそこは昔からそんな噂があったっけ…。何でも旧笹子トンネルで、事故死した小さな子供の霊が出るのだとか…。どうせ「出る」なら怖いヤツよりカワイイ幽霊がいいに決まっている。笹子峠なら近いし、中央線で麓まで行くことが出来る…ということでここに決定しました。

思い立ったが吉日。勢いである。この日の夜にさっそく支度をし、真夜中に最終の大月行きに乗車、吸い寄せられるように甲斐大和駅へ下車した。目的が目的なだけに、どーせ行くなら夜である。峠を越えて笹子に着く頃には始発が来る時間になるだろうというのが私の計算です。


深夜の甲斐大和駅

ここで思った。今回はいつもと違って深夜行動です。それも峠道。果たして普通に歩けるだけの照明はあるのだろうか? 心配になってきた…。

こんな田舎に有るか分からないが、電車を降りて早々にコンビニを捜す…。すると駅の近くの国道20号線沿いに一軒のセブンイレブンがあった。しかし、懐中電灯なんかがコンビニに売っているのだろうか…。取り敢えず入店…。

そしたらなんと売っていた! ラッキーでした。電池は別売りなので、ついでに電池も購入した。予備は無くても5時間程度なら多分持つだろう…。
早速懐中電灯を取り出し、電池をセットしてテストしてみる。よし、ちゃんと点灯した! これで準備は万全だ。


地図を広げ、場所を確認しながら勝沼方面へしばらく歩いていくと橋があり、やがて笹子峠入り口の看板と三叉路が見えてくる。どうやらここが旧国道20号入り口らしい。その角を曲がってすぐの自動販売機で長旅に備えてジュースを買います。



要所に設置された観光案内板


しばらくは住宅が立ち並ぶ明るい道で、観光看板や歌碑などがあり、それらを見物しながら楽しく散歩気分を満喫していました。初めは所詮観光地、大したことないなあ! そんな風に思っていました。
しかし、だんだん坂がきつくなるにつれて宅地が減り、徐々に明かりが無くなってきます。そうなってくると、今から自分のしようと思っていることの無謀さがひしひしと伝わってくるのです。心の片隅で恐れていたことがいよいよ現実のものとなってきました。


芭蕉歌碑。この辺りから街灯の明かりが殆ど無くなってきます。

万一に備え、周りが見えるうちは極力ライトは使用しないで節約していましたが、街の明かりがとうとうゼロとなり、人家が遥か遠くに遠退いてしまうと、いよいよ坂の急な峠道。私の足元すら見えなくなってしまった。見えるのはお空のお星様だけです。

独り歩きの心細さはマキシマムに達します。ライトが無くては本当に恐ろしくて歩けません。風は無く、冷え込みは大したことはありませんが、物音一つ聞こえない峠道は、場所が場所なだけに本当に寒気が走るくらい不気味でした。そんな道がクネクネとどこまでも続いているのです。


視界から街の明かりが完全に消えてどれくらい歩いたでしょうか…。マジ怖くなってきて、引き返す気満々でした。でも、それでは徹夜を決めてここまで来ている意味がありません。恐怖で気が狂いそうなので、誰か隣りに同行者が居ると仮定して、話したり鼻歌歌ったりして歩いていくことにしました。疲れて歩くのを止めようものなら物音一つ聞こえないような所なんです。なのに突然ガサガサと茂みを這い回る正体不明の物音がすぐ近くで聞こえてくるんですよ(泣)


2005年04月10日(日)


日影−笹子線は、冬季は閉鎖するらしい。


峠に差し掛かって30分くらい歩いた頃でしょうか…。道路が閉鎖されていました。

引き返すのに最適な理由が出来たものの、そうするには少々遠くに来すぎたようです。ここを乗り越えるのに勇気は大して必要ありませんでした。しかし、ここから先、もしも何かあっても誰も来ないという心細さ、そして、まるで亡霊がここから先には来るな、と言っているかのようにも思えてきました。
通行止めの柵を越えると、心なしか辺りの空気が急に変わり、胸騒ぎがします。それを誤魔化すためにも私は独り言を言い、歩みを止めずに前進して行きます。


この街道で人の往来が盛んだった頃に茶屋があった所だそうです。

この辺りから盛んにガサガサとか、パチパチとか、木の枝を踏み折ったり、枯葉を踏むような音が周囲から頻繁に聞こえるようになってきました。
確実に何かの気配がします。それだけではなく、周りの崖から小石や砂利がパラパラと落ちてくるんです。いよいよ命の危険までも感じてきました。
これが心霊現象ではなく、動物の仕業であったり、偶然起きたことであることを堅く信じて歩いて行きます。


旧国道とは別に、かつての甲州街道峠道へと入る道が随所にあります。

この辺は、古い峠道が旧国道の脇に何度か現れたり、再び合流したりを幾度か繰り返します。興味はありますが、今はビクビクしながら歩くのに精一杯で、とてもそんな余裕がありません。つか、うっかり入って迷子になっても助けてくれる人が居るとは思えんし…。

今が明るい時間帯であっても、正直独りでは御免したい。


この峠口で突然野うさぎと遭遇。…頼むからやめてッ(涙)


更に進むと、峠の歌碑の脇に整備された旧峠道が姿を現しました。ここで歌碑を見ていたら突然ガサッと音がして、野うさぎとバッタリ遭遇。一瞬モロにビビったさ!
ライトを向けるとピョンピョンと低く跳ねながら茂みに隠れてしまいました。旧国道はまだまだ上へクネクネと蛇行しながら延びています。

野うさぎの一件も冷め止まぬうちに、今度は道路を照らす懐中電灯の明かりの向こうに巨大な動く物体を見た!まるで川口浩探検隊になった気分です。
それがこっちを向いて鼻息を鳴らしています。暗くてよくわからなかったのですが、背格好からして豚に似ていたので、多分イノシシではないかと思います。もしそうだとして、猪突猛進されたら防衛手段がありませんゆえ、イノシシのような生き物の顔のあたりにライトを向けて、ジッとしていたら、しばらくして退散してくれました。


それからしばらく進んでから、再び未確認動物が出現! 姿は見えませんでしたが、同じように鼻息を鳴らして茂みをガサガサと這い回る動物です。やはり光が苦手らしく、ライトを向ければ木々や茂みををガサガサ揺らして退散してくれます。もう懐中電灯が私のお守りと化していますよ。

一つ間違うと命に関わるので、未確認動物とはなるべく距離を保って威嚇しないよう慎重に進みます。


鼻息と、這い回る足音が辺りに響く。この茂みの中には何かが居るようだ…。


写真を撮ると、何故か心霊写真のオーブのような丸い物体がよく撮れます。
しかしこんな形の光る物体なんてドコにも見えない…。
もしやこれはフラッシュの光に反射した杉花粉ではなかろうか?
そういえばこの辺りは一面の杉林で、先程から目のかゆみと鼻水が酷いしなぁ…。


通行止めの柵を越えて来てからというもの、あちこちに倒木、折れた枝、崩れてきた岩や土砂がやたらと散乱しています。
土砂が崩れてから何の補修も施されていないところが殆どで、その惨状からも去年がどれ程災害の多かった年であったかが見てとれます。


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