2005年03月20日(日)

駅から広い国道へと出て、多分合っているであろう方向へと歩いてゆく。

新宮行きの列車はこっちへ走って行くから、おそらく方角はこちらで間違いない筈。さっきまでさんざん道に迷ったから道を探すのは楽勝だった。そのうち国道の行き先標識が見えてきて、現在向かっている方向は新宮方向であり、間違いないことを再認識した。途中でやっと自動販売機を見つけたので、そこで一服して温まり、再び歩きだした。


前々回の宇野駅周辺の散策でノンストップ歩行して大変な目に遭ったので、それ以来きちんと途中休憩を入れるようにした。それだけで随分と疲労の蓄積が抑えられるのに気がついたのだ。同じドジは二度踏まない。経験して知恵をつける。認めたくはないが、もうそれ程若くはないのだ。


しばらく行くと休憩設備があり、ようやく人影を発見。公衆トイレとジュースの自動販売機が数台、小さな食堂兼みやげ物屋が一軒あった。深夜なので当然食堂は営業していない。
それにしても坂がキツイ。どうもここら辺りはちょっとした山のようで、この先がトンネルになっている。歩道橋を渡り、車道のトンネルの脇を見ると、歩行者と自転車専用のトンネルが別に設けられていた。中は薄暗く、とてつもなく深そうだ。時刻は0時、私が女だったら、こんな時間にここを通るのはちょっと躊躇ってしまうところだ。


(心霊写真でも撮れそうな深夜0時の歩行者自転車専用トンネル)


中に入ると、あの冷たい北風はもちろんのこと、天然暖房のお陰でとても暖かい。わー、ずっとこの中に居てえ〜…。

しかしこんな遅い時間とは言え、誰も通らないとは限らない以上こんな所で暖をとっているのを誰かに見られて警察を呼ばれたりするのも困る。中でちょっとだけ休憩して、すぐに歩き出した。しかし長いトンネルだ…。


長い長いトンネルを抜けると再びヒンヤリとした空気に包まれ、民家の立ち並ぶ狭い路地に出ました。
横にあった国道は見えなくなっていましたが、離れた所から車がビュンビュンと通る音が聞こえるので、まだこの近くを並行しているようです。トンネルを潜る前は猛烈に吹いていた強風はピタリと止んでいました。一山超えるだけでこれ程風が変わるのかと思えましたが、お陰で助かりました。しかしさっきより冷え込んできているように思えるのは気のせいか?


狭い道を抜けると、さあいよいよ方角がわかりません。駅前に出たいのだから、なるべく賑やかな方へ歩けば間違いないとは思うのですが、全ての店がシャッターを閉めている上に人気が全然ないのでドコが賑やかな道なのかがさっぱりわからん。もう運任せ勘任せで歩き、違っていそうだったら引き返そうってことで歩いていきます。


(賑やか? そうに見える商店街)

駅の方向の分からないままそのへんをトボトボとうろついていると、やがて踏み切りを発見。線路の先には引込み線が分かれている。これは駅が近い証拠だ。引込み線の方へと歩いていくと、やっと駅が見えてきました。


(裸婦像が街灯に映える深夜の熊野市駅前)

熊野市駅。

ここは有人駅なので、この時間は当然閉まっている。外は冷え込んで寒いし、僅かに冷たい風が吹いて一層寒さが身にしみる。せっかくわざわざここまで来たのだから、せめて暖をとれる場所が欲しい。コンビニが駅前に一軒あるのですが、24時間営業ではないようで、明かりが消えて真っ暗です。仕方ないので他に開いているコンビニを捜して駅前周辺を隅々まで捜します。しかし、セブンイレブンもローソンもミニストップもampmも無い。


何なんだここは…。そればかりか、大抵駅前と言えばありそうな吉牛もカラオケ屋もマンガ喫茶もない。
駅の裏手まで隅々まで捜して唯一営業中だったのはカラオケスナック一軒だけだ。もう落胆するしかなかった。


時刻はまだ深夜1時過ぎ。始発の時間まで3時間以上も寒さにうち震えながら待たなくてはならないのだ。
止まると寒いので、とにかく歩こうと海岸へ向かって歩く。途中を流れている川から川岸へ降りて風を避けながらゲームしたり、砂浜へ出て夜釣りを遠巻きに見物したり(真っ暗でよく見えない)、寒さを防げそうな場所を求めて彷徨ったりして時間を潰す。


グスン…寂しいよう…寒いよぅぅぅぅ…眠いよう…ホームレスは毎日こんな思いをしているのかよ…。見上げた根性だぜ。


そんなこと思いながら寒さとの静かな死闘を繰り広げていました。
寝ているとあっという間の夜も、寒さにうち震えているとこんなに長いものだとは皮肉なものです。丑三つ時の熊野市中心街を不審者の如く何度も徘徊し、夜も4時を過ぎると新聞配達員がちらほらと見受けられるようになる。


そんな目で見るなおばちゃん…確かに今の自分は不審者だが、何もしないってば…。


4時30分頃にはようやく駅が活動開始。
始発列車がアイドリングしている間、駅の待合室でオレンジボックスに投書なんぞして時間を潰しました。頃合いを見て改札へ行き、18きっぷにスタンプしてホームへと移動する。

5時ちょうどに始発の亀山行きが発車。は〜っ暖けえ〜ッ!待望の時間がやって来ました。この時がどんなに待ち遠しかったか分かるまいっ。しばし外をぼんやり眺めていましたが、何時の間にやら爆睡。外が徐々に明るくなってきてふと目が覚めると、きれいな朝日が眩しかった。


(太平洋から朝日が昇る。紀勢本線3322D走行中の車内から)

そして途中の紀伊長島で長時間停車。2両増結し、列車は3両編成となります。
列車が発車すると再び意識が無くなる。だいぶ疲れているのが自分でもわかる。夜中じゅうほっつき歩いていたんだから当然と言えば当然ですが。


松坂駅で待ちがあるので列車を降り、昨日と同じ駅弁がないかなあと思い、ちょっくら売店を覗く。どうやら無いようだが、昨日と違う駅弁が並んでいる。そこで900円のモー太郎寿司という牛肉の巻き寿司を購入すると、「あら竹駅弁通信vol.11」というペーパーをおまけでつけてくれた。おおお、こんなサービスしてくれる駅の売店は初めてだ。


さて、予定では余力があれば亀山に出て伊賀上野駅へ行くつもりだったのですが、既に疲労が頂点に達していたので断念し、ここで急遽列車を「快速みえ2号」へスイッチした。幸い2両編成は空いていたのでボックス席に座り、快適に名古屋まで旅をした。しかし、座ってすぐに爆睡状態だったのか、ここからの意識は全くありません。隣に座っていた人もどんな人だったか全く覚えていない…。


名古屋から10数分程度の連絡で新快速の豊橋行きに乗り換え。
この辺りは随分と混みますが、速度もあって快適です。途中で客がドッと入れ替わり、空いたボックス席に座ることが出来た。するとボックス席の向かいにお年寄りのおばあさんが座り、沢山の荷物を座席に置くと、私の横に目つきの鋭い若い男が座った。

その男が変な奴で、何かの箱を持ってブツブツ独り言を言っている。それを横目に見ているお年寄りのおばあさんが怯えているではないかッ。っつか、私も刺されそうで怖いんですけど…。
すると急に男が立ち上がり、列車のトイレに入って勢いよく扉を閉める。そして一分くらいで出てきたかと思うと、しばらくドア付近に立って「チッ」と舌打ちしたかと思うと、またトイレに入る。よく分からない奴だ。ヒトのこと言えないけど…。

そろそろ終点の豊橋という頃にはもうその男は車内に居なかったので、何処かの駅で降りたのだろうと思っていたら、隣の車両から出てきてまたトイレに入った。ますますわからん奴だ。横の座席に座っていた若い外人も気になったらしく、男が出て行った後でトイレの中を覗いていた。長旅をしていると、とにかくいろんな人がいるものでして…。


豊橋駅で降りたことは前にもあったのですが、写真はあまり持ってないので、この機会に少し収めておこうと途中下車を決める。
その前に駅弁と、お土産にここの駅で売っている「チーズあんまき」という生菓子を購入。お腹も空いていたのでラーメンを注文し、食べ終わった後で改札を出てカメラを構える。

あまりのんびりしていると身延線の連絡が取れなくなるので適当に切り上げ、豊橋1114発の313系浜松行き4両編成に乗車する。

豊橋〜浜松間は満員電車で全然座れなかった。おまけに眠かったので辛い辛い…。途中何度も穴に落ちそうになった。

浜松からは更に編成の短い111系の熱海行き(113系だったかも…)3両編成に乗り換え。
先頭車両の前寄りに乗り、途中まで立ちでしたが、どこかの駅で優先席が空いたので座り、そこからは爆睡。そこからの記憶は全然ありません。気がついたら電車はたまたまどこかの駅に滑り込んでいるところだった。ボ〜ッとよく分からないまま窓の外を見ると、「身延線のりかえ」の看板が飛び込んできた。お、ここは富士か? 分からないけど取り敢えず荷物を持って降りる。そしたらやっぱり富士だった。あぶねえあぶねえ…。


富士から身延線に乗り換えなので1番線に行くと、「1423発の甲府行きは6番線から発車します」と書いてある……。仕方なく逆戻りする。身延線の甲府行きの発車までまだ30分ほどあるので、外もだいぶ暖かくなってきたので、ホームで今朝買った駅弁を食べることにする。「モー太郎寿司」だ。味は決して悪くはないが、好みが少々分かれそうに思えた。と言いつつあっという間に完食。オマケでオリキャラのモー太郎シールがついていた(笑)

そう言えばもう1折お弁当買ったっけ…。豊橋で買った幕の内「三河路弁当」
あ、これ…前にも買った覚えがあったなあ…。こんなことなら富士の「竹取物語」にしておけば良かった…。


間もなくして115系2000番台3両編成の到着。古めかしい車内は空いていて気持ちがいい。旅の締めくくりに丁度いい電車だ。
疲れてはいたが、取り敢えず西富士宮を出るまでは何としても起きていなくてはならない。身延線で最も景色のいい所だ。これを見ずして身延線の旅は語れまい。


(3631Mの進行方向左側窓より撮った富士山)
西富士宮〜沼久保


ちょっと曇っていててっぺんが隠れていたものの、富士山はバッチリ見えた。よーし、これで安らかに眠れる…(オイ)

気がついたら一瞬にして身延駅到着の寸前でした…。

身延に到着すると、お向かいのホームにも115系が停車していた。ここ身延で長時間停車するので、前から機会を狙っていた身延駅の立ち食いそばをもう一度食べようと、改札を出てカウンターから月見そばを注文。すると、どんぶりを洗いながらおっちゃんがダシ切れだと言って注文拒否。オイオイ、三時半と言ったらまだオヤツの時間だぜ?

仕方ないので駅の自販機でジュースを飲んで、改札から再びホームへ。ポニーが車庫に停まっていたので記念にカメラに収めて身延をあとにした。


南甲府に着いたのが1713。実に往復16列車を乗り継いだ旅でした。

えっ、そんなに列車に乗ったかって? では最初のページに戻ってもう一度数えてみてくださいな♪

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