2005年03月19日(土)
今日は予てより計画していた三重の伊勢志摩遠征の日。休日出勤を断り、未明から起きて旅支度です。
本来は九州肥薩線の旅の筈だったのですが、どうしても夢の場所が気になるため、予定を変更し、しーぽんを捜す旅に出掛けます。(大嘘)
というのは冗談で「伊勢志摩の旅」へと出掛けます。
しかし、志摩と言ってすぐに「片瀬志摩」が出てきてしまうあたり、私もどーかしてますね。
まずはルートの選択。身延線から東海道線経由で名古屋に出るか、それとも身延線で甲府に出て、中央線経由で名古屋に出るかです。
時刻表で調べると、南甲府を朝イチで出発した場合、東海道線を経由した時も、甲府行きで中央線経由の場合も、乗り換え回数は同じ4回。名古屋到着時間もほぼ同じ。ただし東海道線経由ですと、途中の富士で373系特急型を拾えるという特典がある。しかし中央線を経由すると、朝イチの富士行きが出る時間より30分遅れて出発しても、結局同じ時間に名古屋に到達できるというメリットがある。ここは車両設備よりも十分な旅支度を優先し、中央線経由を選択しました。
南甲府559発で甲府に出て、すぐの連絡で松本行きに乗り換える。途中の上諏訪で臨時の「ファンタジー舞浜」とすれ違います。183系のあさま色。所々塗装が剥げ落ちていて、赤いオリジナル色が見えていました。
塩尻で電車を降りて、次は中津川行きを待つことになる。時間が少しあるので一旦改札を出て、駅そばを食べる。ちょっと珍しい「玄米そば」というものを頼んでみた。しかしどうだろう…玄米っつったって、まるで雛あられのようなものを湯で戻しただけではないか。う〜ん騙されたなあ…。
そばを食べ終わって、まだ若干時間が許すので、適当に駅前を写真に収めてから改札を潜り、出発時間待ちの313系に乗る。
身延線のそれと車種も外見も一緒なのに、なぜ独特の耳障りな効果音が微妙に異なるのかが不思議である。
この電車は中津川止まりなので、ここで乗り換えとなる。高架橋を渡り、211系の快速名古屋行きにすぐの連絡です。ホームに駅弁売りが居ましたが、211系のオールロングシート車で駅弁という訳にもいかないので、ここはグッと堪えて我慢です。こうして駅弁屋がまた一つ消えてゆくのでしょう。
名古屋に着くと、にわかに人が多くなる。というか、いつもに比べてやや多く感じられた。万博効果であろうか。まだ始まってもいないのにね。
快速「みえ」が到着するまであちこちカメラを向けていると、すぐにキハ75系の2両編成が入線してきた。座れないのは承知だったので発車ギリギリまで外で粘り、列車に乗った。僅か2両の車内は当然の如く満員でした。コレに乗って鳥羽まで行くのは今回が初めてです。四日市までしか乗ったことなかったので。
快速「みえ」は、途中の四日市から伊勢鉄道線を走るので、青春18きっぷのほかに運賃490円が加算されます。車掌が清算に来たのでお金を払い、ペラペラの紙切れのきっぷを貰う。
そういえば、始発駅の名古屋からずっと乗っていたアクティブな格好をした髪の長い女の子、可愛いかったなあ。ジーンズの上着を羽織った後姿に見惚れてしまった………。…笑え。
なのにさあ、髪を金色に染めた小太りのインテリ野郎がワンピの単行本を読みながら目の前に立ちはだかりやがって。邪魔だっつうの。しかも女連れ…。
余談ですけど、たまーにある。旅先の列車の中で、可愛いコだなーって思って見ていると、たまたまそのコと視線が合ってしまいそうになり、慌てて視線を逸らすこととか。そのうちそのコも気になったのか、やたらとこちらを気にして、電車を降りても外から車内にいる私と視線が合ってしまったり。相手がどんなふうに思ってこちらを見ていたのかはわかりませんが、こういうどうとも解釈出来る何気ないドラマが生まれるのも旅の醍醐味だったりします。
話が脱線してしまった…。
私がトイレに入っているうちに、列車はどこかの駅に着いて、トイレから出てくるともうそのコは降りたあとでした。もうちょっと辛抱していればよかったなあと後悔する。
途中の多気でお客が沢山降りたので、ようやく着席するスペースが確保できた。多気から鳥羽までは座ってゆったりと旅が出来ました。
さて、夢に出てきた駅は確か「鳥羽駅」の一つ隣りの駅だった筈です。しかし、JR鳥羽駅の一つ手前の駅は臨時駅なので、今のシーズンは列車が停まらない。そんなこともあり、前もってネットでその駅のことは調べてありましたが、どーも夢で見たのと違う気がした。実際、その駅を通過する車内からもチラッと見えたのですが、やはりどこか違う。
となると、夢で見た駅は近鉄鳥羽駅の隣りの駅なのか。となると、近鉄鳥羽駅の隣り、左右どちらか片方の駅、ということになる。
考えていてもしゃーないので、適当に駅ホームでカメラを構えたあと、改札を抜けて外に出る。
でもまあ、折角来たのだから少し外を散歩してみることにします。ここまでずっと列車に乗りっぱなしだったので、ちょっと運動がてらの散歩です。
(つぼ焼きを頂いたJR鳥羽駅前の商店街)
駅前の商店の並びを通っていると、腰を曲げたおばーさんが、つぼ焼きはいかがかと言って話し掛けてくる…。しまった!目が合ってしまった。こうなってしまうと弱い私は、ついつい足を止めてしまう。
おばーさんに言われるままに狭い店内に案内され、腰掛けに座り、さざえのつぼ焼きを焼いてもらう。
大きなさざえ3個で600円也。思ったより安い…。
さざえを焼きながらおばーさんが矢継ぎ早に話し掛けてくる。今日は学校は休みなのかとか、ウチの息子がどうとか、試験問題がどうとか…。
あのぅ、私はもうとっくに中年とか呼ばれる年齢なんですけどね…。
さらに、ドコから来たのかという問いに、甲府から来たと答えたところ、何やら固まってるし…。
甲府を知らないらしい。山梨県だと言ってもピンとこないらしいので、静岡より北の方だと言ったらようやく少し反応。なのになぜ熱海が出てくるのさ。熱海は静岡の東でしょうが。もう一つヒントが必要と思い、富士山とかある所だと言ったら熱海の北の方かね?と言う。なかなか鋭いボケである。そこは御殿場ですって…。どうやら新幹線が通る所しか記憶がないようなので、無駄な説明はここらへんで諦めることにした。
にしてもこのばーさん、何を言っているのか言葉がイマイチ聞き取れないので、後は適当に流して「ごちそうさま」をさせてもらう。
(近鉄鳥羽駅前のショッピングセンター一番街)
その後は適当に駅の周辺をグルッと周り、ショッピングセンターでおみやげ物を見てゆく。特に買うつもりは無かったんですけどね…。
そのまま二階へ登り、渡り廊下を通って近鉄鳥羽駅で一つ隣りの中之郷までのきっぷを買い、電車の時間までソフトクリームを食べながら時間を潰し、来た電車に乗る。しかし、お隣の駅まであっという間だった。わざわざきっぷを買うまでもないってくらい。歩きでも十分である。
駅に降り立ち、実感を確かめるが、どーも違う。夢で見たのはこんなコンクリートの駅ではなく、枯れ木ばかりの殺風景な駅だった筈だ。
階段を下りて遠くを見ると、歩いて二分くらいの所に見覚えのある水族館が見えた。見覚えがあるのも無理はない。鳥羽の水族館は昔、社員旅行で来た場所だ。確か観光バスに乗って来たんだったっけ…。
そうか!そうだったのか…あの社員旅行の時遠くに見えていた駅はこの中之郷駅だったのか…。思わぬ落とし穴にがっかりしてしまう自分。気付けよ!!
折り返しの電車を待つのが馬鹿馬鹿しいので、トボトボ歩いて鳥羽まで引き返す。周りを見ると、家族連れや遠足の小学生、そしてカップルやガールズといった面子ばかりである。自分だけ浮いてないか? あ〜早くこの場から離脱してえ!
近鉄鳥羽駅に着くと、既におやつの時間が来ている。
そういえば、まだ食事らしい食事をしていなかった。ですが、鳥羽で時間を大量に消費してしまい、あまりのんびりしてもいられなくなった。逆隣りの池の浦駅のことも気になったが、一応ネットで調べてそこの駅も夢と違うのはほぼ明白だったので今回は諦め、ひとまず松坂まで近鉄特急で引き返すことにした。
JRの快速みえを使えば安上がりだったけど、乗りたい時に限って列車がないし…。
この特急、発車時のモーター音が尻に響くようなダイナミックさでなかなかいい感じだった…。
(近鉄12000系 近鉄鳥羽駅にて)
それにしても、JR鳥羽駅と近鉄鳥羽駅を比べて、明らかに近鉄の方が客数で勝っているのが何だか見ていて面白かったです。
今回の旅の要塞とも言えるJR松坂駅。
ここから名松線に乗る予定なのですが、いかんせん列車の本数が少ない。一本前の列車は既に出たあとなので、次の列車まで待つわけですが、あと一時間近くもある。それなら幸い今日は風もなく暖かいので、駅のホームで駅弁でも食べようと思い、売店で駅弁を所望するのだが、売り切れだと言う。
ただし、15分ほど待っててくれればすぐに入荷出来ると言うので、とりあえず「モー太郎弁当」をお願いして、その間に駅の立ち食いうどんをたべることにした。せっかく松坂まで来てうどんを食べるのである。注文するのはもちろん「松坂うどん」390円だ。松坂駅は、食に関しては充実している駅だった。
しばらく列車を待っていると、松坂止まりのキハ40+キハ11の4両編成がやって来た。
この列車、3両と1両に切り離され、3両が亀山行き、1両が伊勢奥津行きになります。私は1両編成の列車に乗車し、出発時間を待った。
出発時間になり、列車に乗車していたのは私を除いて5、6人くらいだったでしょうか…。ワンマンのようでしたが、運転手の横にはよく喋る若い車掌が一人居て、運転手にブレーキがどうとか、ここで加速してどうとか、いろいろ運転手にアドバイスしている。もしやこの運転手は新人さん? 大丈夫かいな?
でもまあ名松線は廃止が囁かれていたくらいのローカル路線。新人が練習するのにお手頃なのでしょう。
列車は「上ノ庄」「権現前」と停車して行きますが、期待していたのとは裏腹にドコを見てもイマイチ面白そうな駅がない。でもまあ取り敢えず何処かで降りないと、せっかくここまで来た意味もないので、すれ違い列車のアクセスの良さから「関ノ宮」という駅で下車してみた。
しかし、駅は待合所の屋根とホームだけという何とも簡素な造りでした。駅のそばを一般道が走り、ガソリンスタンドが一軒見えます。
民家もそこそこ建っていて、思っていたほどド田舎という雰囲気はない。
(JR名松線 関ノ宮駅ホームからの風景)
つまらんなあ…と、拍子抜けしたまま折り返しの列車で松坂へ戻り、松坂から新宮行きの普通列車に乗って、本日最後の目的地、大泊駅へと向かいます。
なぜここを目的地にしたかと言っても特に深い意味は無い。単に乗降客が少ない駅を見る方が面白いのと、おそらくここに一晩泊まることになるかもしれないという意味で「大泊」という駅名と掛けた洒落のつもりです。
新宮行き普通列車は今どき珍しいキハ40系の3両編成でしたが、紀伊長島で切り離しを行い、ここから新宮までは一両での単行運転となります。揺られることおよそ2時間と40分、最終目的地の大泊駅に到着しました。
三重県や和歌山県は太平洋側に面したところなので、3月にもなればさぞかし暖かいであろうと高をくくっていましたが、ホームに降り立つと一体何なのだ、この寒さわッ!
冷たい風が吹き抜け、さっきまでの鳥羽駅や松坂駅での暖かさは微塵も無い。
これはきっと朝からロクに食べてないからだ。カロリーを摂っていないからだろう。そう思い、さっき買った駅弁をここでさっそく食べることにする。しかし最終電車がまだ来るし、こんな狭い待合所で食べていたら怪しまれるだろうから、駅の高台から大泊の海水浴場へ降りてみる。駅から歩いて5分少々です。
しかし、民家は幾つか建ってるものの、辺りは街灯すらロクにないような所で足元がよく見えない。道がクネクネ入り組んでいて土地勘がないと迷います。
それでもまあ一応は海水浴場に辿り着いたので、ザザーッという波の音を聞きながらお弁当とします。
ここは夏場にはキャンプ場として開放しているらしいのですが、今は当然誰も居ません。っつうか、ホントに周りが真っ暗なので、波の音がしないと自分が今ドコにいるのかさっぱり分かりません。唯一一箇所だけある堤防から砂浜へ降りる階段付近に設置された街灯の所で駅弁を広げることにします。座る所がないので、とりあえず階段に腰掛ける。堤防が風を遮ってくれるので、ここならあまり寒い思いをせずに済みそうです。っていうか、自分はこんな所で何をしているんだろうかと一瞬思った。
ま、深いことは考えず、今はお弁当に集中。
微かに読める駅弁のパッケージには、「蓋を開けるとメロディーが流れる」とある。これは珍しい。蓋を開けると音が鳴る駅弁は、和田山駅で買った駅弁で、蓋を開けたら「モー…モー…」と牛の鳴き声がしたやつ以来だ。
このモー太郎弁当の蓋はモロに黒毛和牛の顔で、街灯に反射して黒光りする顔がちょっと怖い。はて、蓋を開けてもメロディは鳴らないではないか。そうか…周りが暗いからセンサーが反応しないのだろう。中を覗くと牛のすき焼きがたっぷり載っています。これを寒さに震える手で一つつまんで口に運ぶ。
「うめえ!」
そう思った瞬間1260円の黒い弁当箱の中はカラッポだった。ま、ハラペコだったしね…。
でもこれは久々に脳天直撃の高得点の駅弁でした。帰りも松坂に寄ってくぜぃ。
さあ、まだ時刻は10時。これから朝五時の始発までこんな所で何をしようかと途方に暮れる。
海を見たって真っ暗だし、第一寒い。砂浜を歩いていても何も見えなきゃ正直つまらんし、デジカメ撮ってみたが当然黒一色。ひとまずこんな時のために持っていたゲームボーイアドバンスに電源を投入して、懐かしの「リンクの冒険」をプレイ。これにアツくなれば少しは暇つぶしになるし寒さも和らぐだろうと…。
20分もプレイした頃には鼻水がたら〜り…。余計に寒くなってきた!
もうこんな寒い所にいつまでも居られないッ。ひとまず駅に戻ろうとその場を後にする。しかし周りが真っ暗で帰り道が分からず、北風の吹き荒れる中を道に迷う。そんなことしているうちに列車の音が聞こえてきた。時刻表を見ると、熊野市行きの最終だ。列車の音で駅の方向が分かったので何とか大泊駅に辿り着きました。
(JR紀勢本線 大泊駅)
もう始発の時間まで当分お客は来ない筈です。駅寝でも敢行してやろうかとも思いました。
しかし駅の待合室は全開の吹きさらしなので、とても居られないくらい寒い。窓を閉めたくても風の吹き込んでくる改札側には扉がないのでモロなのです。
こんな所にいつまでも居たら風邪引いてしまう。
自宅から何百キロも離れた所で風邪引いたりしたらひとたまりもありません。つか、暖かいものが取り敢えず欲しい。しかしこの付近にはジュースの自動販売機すらない。
隣りの熊野市駅なら大きい駅なので自販機やコンビニがありそうですけど、もう最終が行ってしまったあとなので朝の始発まで列車は無いのです。
こうなったら仕方ない。生きるためだ!運を信じて隣りの熊野市駅まで歩いて行くことを決意する。
こんな時に頼りになる時刻表。駅間の距離を時刻表で調べる。すると2.4キロ。決して遠くはない距離だ。但しこれはあくまでも線路を歩けばの話だ。都心ならともかく、こんな田舎の線路を歩いたって真っ暗で前も後ろも見えるわけがないし、貨物列車や回送列車が通らないとも限らない。
仕方ないので国道を地道に歩いていくことにします。駅まで2.4キロ、国道で行くとその1.5倍はかかったとしても約4キロ。40分も歩けばじゅうぶん着けるだろう……行ける!
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