命懸けの峠越え PARTU
その2
かつては橋か何かあったんでしょうが、大雨か何かで橋が流れた沢なのでしょう。規模、水量はたいしたことありませんが、完全に道が無くなり、この先の道がさっぱり見えてこない。ここまで来て引き返すのは勘弁したいので、飛び乗れそうな石を懐中電灯で探して一つ一つ乗り移り、獣道のつづきがあるっぽい場所をひとつひとつ探して向こう岸へと渡りました。そんな小さい沢がこの先もう一箇所あります。
零時56分
あちこちが流されて沢が出来ていて、道がもうさっぱりわかりませんでしたが、何とか迷わずにここまで来ました。この辺りは何とか原型を留めたそれらしい道になっているみたいです。
おおっ、ここから道が階段状になっていますよ! 何かの予感に心が躍ります。
零時58分
おおおっ、これがあの有名な甲州街道3本杉のひとつ、矢立の杉ですか。ついにここまで来ましたぞッ。まだ先は長い…。
そういえば、甲州街道3本杉といえば、一つはこの矢立ての杉、そして枯れてしまった初鹿野の大杉。あと一本は何だったっけ?
ちなみにこの杉の木、中が完全に空洞になっているみたい。でも、ちゃんと葉が茂っているから不思議です。写真ではよく見えませんが、木の幹の左上にマジックで 「井上」 と落書きされていました。
ここの休憩所でちょっと腰を下ろして休憩し、立ち上がって一、二分も歩いたら、なんともう県道との合流地点でした。こちらの方が案外近道なんですね。
さあ、県道まで出てきたのはいいのですが、ここから右か左か、どっちへ行けば笹子峠なのかがわかりません。
普通に考えれば、上り坂の方へ上がればいいと思えますが、掲示されている略図を見ると笹子峠へ行くには逆方向となるようです。解んなくなってきたので、こんな時の為の地図をひっぱり出し、確認する。どう見ても登り方向が笹子峠の方向なので、初心の通り、坂を登っていくことにします。確か前回来た時は、トンネルを境に登り下りの坂が逆転した筈です。トンネルを通り越していない限り、坂が逆転する筈がないわけだ。
しばらく歩いていると、車の通るタイヤの「シャー」という音が上の方から聞こえてきました。それと同時に明るい車のライトが段々と坂を下りてきます。やがて前方が明るくなり、車が一台通過してゆく…。挨拶がわりか、「ピッッ」とクラクションを鳴らす。
こんな時間に人家一軒すら無い峠道をわざわざ通るあたり、私同様物好きに違いない。
…やっぱりまだ車両は通行止めになっていないようだ。
1時51分
重要有形文化財に指定されている笹子逐道、通称「旧笹子トンネル」までとうとうやってきました。
11時過ぎに駅を出発すると、だいたい2時ちょうどにここへ着くようになっているみたいです。
ここがいわゆる「でる」と噂される場所です。辺りは静まり返り、時折ガサガサと茂みを揺らす音が聞こえ、洞穴の向こうから風が吹き付けてきて、まさに雰囲気バッチリです。
しかし、ついさっき車がここを通ったかと思うと、雰囲気が壊れてしまいます。やっぱ来るなら車両通行止めになってからですね。
ちなみに前回この付近に放置されていたボロボロの車は撤去されており、それを撮った写真に写っていた変な顔はガードレールの支柱であることが今回再訪してみてみてわかりました。
それでは…行きます。
今週の山場ァ〜!
1時53分
前に来た時とは違って妙に水気が多く感じられます。最近雨が降った関係でしょうか。
うーん、マジで出たら嫌ですが、やっぱり何も出ないし、何もきこえませんですよ。
では、もう少し進んでみましょう…。
1時57分
それにしても狭いトンネルです。この道路をメインに使っていた当時は車社会とは無関係だったからこんなんで良かったんでしょうけどね。
たまたま車2台がトンネル内で行き違いになった時とか、今まで一度も無かったんでしょうか。
何はともあれ、今回も結局何事も無く通行してきました。
「出る」というのがそもそもデマなのか、自分に霊感が全く無いかのどちらにせよ、撮ったデジカメ写真にも何も写っていませんでした。デジカメじゃ心霊写真は撮れないのかな?
先に車が一台通過したのを確認しちゃったので、前回に比べて怖さも50パーセント減(当社比)
あの車が幽霊自動車だったら恐怖ですけど…。
2時4分
トンネルを抜けてちょうど2時を過ぎました。
このすぐ先にある休憩所で、事前に買っておいた駅弁を食べます。これも私独自の肝試しの一環(笑)
荷物を置いてしばしの休憩としましょう。足も疲れたけど、もう肩が痛い。
それにしてもこの辺りは静か過ぎて全然落ち着かんな…。時々ガサガサと茂みから音がするし。
ここで撮った写真の画像なのですが、変な光のようなものが写っています。
画像が暗くてよく分かりませんが、デジカメのモニターで確認したり、ホームページ作成ソフトで自動修正をかけると、こんなように白いモヤモヤがよく見えるようになります。
これ、何? なんかヤバい写真なのかも。
2時12分
小淵沢の駅弁「元気甲斐」です。クルミと玄米を葉でくるんだご飯が最高にウマイ。でもね、座って休んでいるうちにみるみる体が冷えてきちゃって手がかじかんで弁当どころじゃなくなってきた。
取りあえず一段目の弁当を食べ終わった頃(元気甲斐は二段重ね)、騒々しくクラクションを鳴らした車が、遥か遠く笹子方面から段々近づいてくるのがわかります。やがて車のライトがトンネルの中から漏れてくると、車から降りたらしく、彼ら数人が大声でバカ騒ぎしているのがトンネルの中から聞こえてきた。季節外れの肝試し?
しかしこんなにバカ騒ぎされたら、さぞかしお化けも迷惑でしょう。深夜の静かだった峠道が、にわかに騒々しくなった。
何だかほどよい恐怖感に浸っていた気分が完全に損なわれ、しかもこんな所で飯食ってるのを彼らに見られるのもちょっとアレなので、早々に荷物を纏め、静けさを求めて出発することに。
でもね、こんだけ周りが静かですと、そうとう距離が離れてても騒いでる声が聞こえちゃうんですよねぇ…。ムードぶち壊し。やっぱここへ来るなら車の通行が禁止になってからですね…。
やがて1キロちょっと歩いた頃にさっきの連中が車で下ってくる。なんと車2台に便乗している大所帯。彼らの車が脇を通り過ぎて20メートルくらい先のところで車を停めて、なにやら話をしている。
「何だあれ。お化けか?」
「人か?」
辺りが静かなので声が丸聞こえです。私のことを言っているらしい。仲間としばし議論し、「人」ということで決着がついたのでしょうか?再び車を走らせて彼らは行ってしまった。
3時20分
完全に気分が損なわれ、もうどうだっていい気分で峠を下山。しばらく変わり映えのしないクネクネ道がつづき、やがて県道の脇から旧道が現れ、このような看板が見えてきました。甲州峠唄なんてのがあるんですね。でもメロディがわかりませーん。
確かここって前回来た時、野ウサギにビビらされた場所じゃん?
もっと見る もう充分です