超安価 モジュール風味
Nゲージの間@エムサ菌総合研究所

 

 自宅でNゲージを走らせる場合、収納の問題があって固定式レイアウトはおろかモジュール レイアウトすら望むべくもないため、床の上にレールを敷いていました。 この、所謂『絨毯平野』 『畳平野』のスタイルは初めてNゲージを走らせた時と変わらず、建物やアクセサリーといった 沿線風景は無いに等しく、レールの敷設規模も大きくないため何だか味気なくてつまらないと 思うこともありました。
 一方、私も参加させてもらっている模型サークル (学生時代の仲間がメイン) では主に運搬の都合でモジュールで遊べる状況ではないため、運転会の際は会場の備品の会議机 に模造紙を掛けてその上にレールを敷いています。 線路の距離・規模が自宅を比べて大きい からか沿線風景がないことはそれほど気になりませんが、それ以上に、運転会に参加するたびに ヤードやポイントから離れた本線などで複線間隔がバラバラになってしまうことが気になって いました。

 そこで、サークル運転会において大掛かりとなりがちなモジュールや細かいパーツ類を 使わなくても複線間隔を維持できる方法を模索するとともに、主に自宅で遊ぶ用のちょっと した地面というか、平面的でもいいからそういった類のものを手掛けてみようかと考え、 まずは実験に着手しました。

 ここではそんな『モジュール風味』を取り上げてみようと思います。 もしかしたら私が 知らないだけで、既にこの方法でやっている人がいるかもしれませんが・・・

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◆ 基本的な構想
 モジュール風味の各種規格については、前述のとおり自宅で遊ぶことを前提に考えました。

 レールはTOMIXのものを持っているのでそれを使用することとし、モジュールには固定しない ことにしました。 それは、サークルの運転会への応用を考えた時に「レールを固定せずとも 複線間隔を揃えられる点」が実行できなくては多くの意味・意義を失うためです。 ほかにも、 車両によって似合う雰囲気・似合わない雰囲気・イメージがあるところに一つのイメージで モジュールを作ってしまうと楽しみ方が限定されてしまうように思えたこと、仮に複数の イメージのモジュールを持った場合実際にその時使うのはその中の1種類と思われるのでレールを 固定してしまうと使用効率が悪くなること、あるイメージで作ったモジュールに早々に飽きた 場合の手戻りを少しでも軽くすること・・・ などが挙げられます。
 第一、固定を考える時点でモジュール『風味』とせずにちゃんとしたモジュールに傾くはず ですから、最初からその考えには至りませんでした。 それに、素材を考えるとレールを固定 することとの「やっていることのバランス」が取れません。

 構造としては、地面となる素材の、レールを置くべきスペースの両側に「レールを置くため のガイドとなる出っ張り」を設け、位置合わせが簡単にできるようにしました。

 寸法面については、幅方向は基本的に線路の両脇のスペースが左右で同じとし、長さ方向は レールの規格に合わせることにしました。
 現時点では複線の直線区間のみの製作となっていますが、具体的な寸法を記すと、レールを 置くべきスペースの幅は19mm、複線間隔が37mmの場合中央のガイド幅を18mmとして、若干の誤差 を許容しています。 外側のガイド幅はひとまず10mmとしています。 また長さ方向は、後述する 素材の大きさに近い長さとして直線区間では420mm (280mm+140mm) を 標準的な値としました。 架線柱取り付けパーツはモジュールの片側の端から10mmのところに 設置したので、標準的な直線区間では架線柱が420mm間隔で植えられることになります。
 その他細かいところは、そのモジュール風味を組み込むレイアウトプランであったり、地面に 使う素材の大きさに合わせて適宜調整していくことにしました。
(この項の最終更新日 2010.3.15)

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◆ 試作編
〜その1 『厚紙編』〜
 まず、モジュールの基礎となる「地面の素材」として『厚紙』に着目しました。 使える大きさ のものが100円ショップで売られていたからですが、やはり一番大きい理由に「安価であること」 が挙げられます。 それに紙という素材は加工が容易ですし、親しみやすいところもあります。
 応用して運転会に持参するようなケースを考えると、運搬時の容積がなるべく小さく収まり かつ極力軽量であることが求められるため、木の板は最初から候補になりませんでした。

厚紙版・モジュール風味  そのような経緯で試作した厚紙製モジュール風味 【左画像】 は、 ちゃんとしたモジュールで合板を使うところに1枚物の厚紙を用い、レールを置くガイドとして 工作用紙を帯状に切り出したものを貼り付けたものでした。
 ・・・と、考えたとおりのものを作ったわけですが、ガイドを貼った事で厚紙に予想外の反り が起こり、表面が大きく波打ってしまいました。 試しにレールをセットして車両を走らせて みましたが、車両の重量で地面が沈んで興醒めもいいところでした。 画像からも、歪むように 波打っていて縁がまっすぐでないことがわかりますし、画像からはわかりにくいですがレールと ガイドが平行になっていないのも、厚紙が波打っているためです (実はレールの 中央がわずかに盛り上がるように反っていることもありますが・・・)
 その波打ちはガイドの工作用紙が1枚だったからかもしれず、何枚か重ねることである程度は 解消できるのかもしれません。 しかしそれ以上に期待はずれだったのが、思いのほか厚紙に 強度がないことでした。 力の掛かり具合によっては簡単に折れたり折りスジが入ってしまう ために数回の使用が限度と思われ、サークルの運転会に持ち込むなど運搬の機会があると使い捨て という事態も起こりそうだと思われたため、加工の手間も含めて考えると厚紙製は実用にならない という結論に達しました。
(この項の最終更新日 2010.3.15)

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〜その2 『コピー用紙編』〜
コピー用紙版・モジュール風味  続いて作ったのが、地面の素材の厚紙を『コピー用紙』に代えたもの 【左 画像】 です。 厚紙では反りや波打ちに悩まされましたが、漠然と、コピー用紙は薄手 でしなやかなのでそれらに対して許容が大きいのではないか・・・ と考えたからです。  A4コピー用紙の長辺が厚紙の短辺とほぼ同じだった (厚紙がA3より一回り 大きいものだった) ことも好都合でした。 それに傷んだ場合の作り直しが厚紙以上に 容易で、安価で軽いことも見逃せません。

 工作用紙によるガイドはまず2枚重ねのものを作りましたが、反りや波打ちが起きた際に ガイドの深さを少しでも確保することを考えて、急遽4枚重ねのものも作って同時に実験しました。  その結果、工作用紙の枚数に関わらずガイド・コピー用紙ともに厚紙の時ほど大きく波打つ ことが無く、列車の走行に伴う上下動も少なく、思いのほか良好な結果が得られました。  但し工作用紙2枚ではガイドの深さがちょっと足りないと思われ、一方の4枚では剛性もあり ちょうどTOMIXの架線柱取り付けパーツの厚さとほぼ合うため、4枚の構成で製作を進めてみる ことにしました。

 ここまでの作例では、工作用紙とコピー用紙の接着には木工用ボンドを全長にわたって塗布 していますが、ボンドに含まれる水分の影響なのかコピー用紙に細かい波打ちが見られたので、 この後に試作した区画では6〜8センチ程度の間隔を開けた「点付け」を行なってみたところ、 強度の不安がなくはないものの細かい波打ちの多くを解消できたので、今後はこの方法を標準に するつもりでいます。 なお、工作用紙の積層部分では合板的効果を求めるため全長にわたって 接着しているのは当然のこととして、1区画内のコピー用紙同士は接着していません。
(この項の最終更新日 2010.3.15)

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〜その3 『バラスト表現編』〜
 実物の線路は広い範囲がバラストに覆われていて、特に線路が地表面にある場合は路盤が 見えることは少ないものです。 しかし模型の道床付きレールの道床幅は一般に実物と比べて 狭いので、レイアウト作りにおいて「バラスト撒布」は必須と言えましょう。 この場合、 レールの道床部分も含めてバラストで覆ってしまい、それを水で溶いたボンドで固めてしまうと いう工法が一般的なようです。 これによって地面と道床の境目を隠すことや、色合い・雰囲気 を揃えることも可能ですが、我が『モジュール風味』ではレールを固定しないため、このような 工法は採れません。
 工作用紙で作ったガイド部分だけにバラストを撒くという方法もありますが、経年変化や レールの付け外し・立てかけての収納や移動によるバラストの欠落や、バラスト面にゴミや 埃がたまりそうでそれの清掃作業性を考えると、ちょっと尻込みしてしまいます。 何より、 モジュール風味としてその他部材の素材を考えると大袈裟な気がします。

バラストの表現  そこで極めて平面的ではありますが、バラストの表現に「パソコンで印刷したシート状の もの (以下「バラストシート」とする) 」を用い、それをガイドに 貼ることでバラスト撒布に代えることにしてみました 【左画像】
 バラストシートは、手持ちのデジカメ画像からバラスト部分のみをカットし、サイズを 調整してそれがA4用紙の全面にくるようにコピー&ペーストして作成しました。 あとは 専用紙に印刷して、所定のサイズに切り出して該当個所に貼るだけです。

 道床の上部が斜めにカットされていて、ガイドの厚さも約2mmあるので、ガイドと道床の間の 隙間が大きくなる・・・ と考えて、バラストシートの幅をガイドより2mm ( ガイドの両側にレールを置く場合は4mm) 大きくし、大きい分をレール側に飛び出させて 貼りました。 試作中の3区画全てその方法で加工し、揃ったところでレールをセットしてみた ところ、まずレールの付け外しが極めて厄介で、バラストシートに用いた紙がやや硬くてレール を押すようになってしまい、レールにかかる力が地面となるコピー用紙にも及んでいるようにも 思われました。 そのため、隙間承知でバラストシートの幅をガイドと同じに改めたものに 貼り直すことにしました。
(この項の最終更新日 2010.3.17)

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〜その4 『バラスト表現編・改』〜
 前回得られた教訓をもとに、バラストシートをガイドと同じ幅のものに貼り直して みました。

バラストの表現・改  レールの付け外しに関わる問題は解消しましたが、ガイドと道床の継ぎ目やガイドの断面が やや目立ち、道床とバラストシートの表情の違いが際立ってしまいました。 見た目の後退は 明らかですが、目を瞑ることにしましょう。

 次の段階は、信号・通信などのトラフ (配線を収納する側溝のようなもの で、ここでは当然ダミー) や柵などを取り付けることで『線路周りの表情を豊かにする』 ことになりそうです。 外側ガイドのなるべく外寄りに取り付ければ列車の走行に支障は無い と思われますが、線路両側の敷地に余裕が無さ過ぎ、これが故に実物と比べて広い複線間隔が 余計に広く見えてしまうのではないか・・・ と考えるようになりました。
 そこで、外側のガイド幅をもっと広げることで視覚的な違和感を打ち消すことにし、試しに 8mm幅のガイドを用意して既存のガイドの外側に貼ってみました。 如何せん紙工作であるため 切り出しや貼り付けの過程でガイドが完全な直線にできず、どうしてもガイド間に隙間ができて しまいます。 バラストシートを貼ってしまえば見た目は何とかなりますが、実際に柵の取り付け を考えると、『モジュールの各区画内の配置をどうするか』というレイアウトプランを練る際に 一緒に考えるべきところではないかと思えてきて、同時にこれ以上現物合わせで進めることは 無理があると感じました。
 そのため、バラストシートを貼る前の段階で加工を打ち切りました。
(この項の最終更新日 2010.4.2)

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 ・・・ということで、試作編としてはこれで終了、あとはモジュール風味の各区画を作る際に 『ぶっつけ本番』でやっていこうということにしました。 レイアウトプランはまだ固まって いないので、またしばらく時間がかかるのではないかと思います。

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