おしゃれアルバム物語

おしゃれアルバム昔話

「猫侍」



むかしむかし、あるところに、女手1つで日々おしごとに励み、
二人の娘を育てる立派なお母様がおりました。



ところが、おしごとの無理が祟って病に倒れ、働けなくなってしまいました。

そこへ意地の悪い地主がやってきました。

「いくら病が長引いているといっても地代はお払いいただかないと困るのだがねえ」

「申し訳ございません。もう少しだけ待って頂けないでしょうか。娘二人で働いて
必ずお払いいたしますので」

「もう二ヶ月も待って差し上げているのですよ。払えないというなら
お貸しした土地は返していただきますが、よろしいですかな?」

「それだけはどうかご勘弁を…」



「じゃあ嫁入り前の可愛らしい娘さんを地代代わりに頂くことにいたしますぞ。
文句はないですな」

「そんなご無体な…」



「お、お母様あぁぁ」

土地は取り上げられずに済みましたが、嫁入り前の大事な娘を取り上げられた
お母様は、ひどく悲しみました。

お母様の病は一向に良くならず、大切なお姉様も失った妹さんは、
悲しむ間もなく慣れない手つきで
たった一人、地主様の畑でお仕事に精を出しておりました。



そこへ、意地の悪いお代官様が現れました。

「おたくはまだ年貢を納めておられませんなあ。」

「申し訳ございません。お母様の病がひどくて
働くことが出来ないのでございます。

私一人だけで作付けするのは限界ですので
年貢は何卒ご勘弁を…」

「年貢が払えないというなら仕方ない。お嬢ちゃん自身を
年貢代わりにお納めいただくとしよう。」



「そ、そんなぁ、お母様あぁ」

なんと、お母様は上の子に続いて下の子まで奪われてしまい、
たった一人になってしまいました。

そんなある日、町外れの茶屋に、変な訛りがある流浪人が
フラッと現れました。



「おしゃかにゃそばを一杯くださるかニャ」

「へぇお魚そば一丁」

その変な訛りの流浪人は、とても美味しそうに、
出されたおそばを汁まで綺麗に平らげました。

「あーうまかったニャ…ご馳走様ニャ…
ところでおねえにゃん、この辺りはやけに活気がないように
お見受けいたすニャ」

「へえ、実はここだけの話、かくかくしかじかなことがあって、
村人たちが次々と酷い目にあっているのでございます」

「それはよくにゃいニャ。お代はここに置いとくニャ。釣りはいらないニャ」



「へぇ、まいどぉ」

そういって、立派な髭を蓄えた流浪人は村の中に消えていきました。

それから一カ月が経ったある日、再びあの流浪人が、町外れの茶屋に
姿を現しました。



「うにゃぎそばを一杯くださるかニャ」

「へぇ、うなぎそば一丁!」

流浪人は、出されたおそばを前にも増して美味しそうに、
汁まで綺麗に平らげました。

そして、空になった器の残り香を名残惜しそうに嗅ぎながら、
茶屋のお姉さんに言いました。

「ところでおねえにゃん、以前よりも村に活気が戻ってきたようだニャ。

「実はここだけの話、かくかくしかじかなことがあったらしいのでございますよ」

「それは良かったでござるにゃ。ではお代はここに置くニャ。お釣りは結構だニャ」

そういって、代金を払って茶屋を去ろうとする流浪人に、茶屋の娘は声をかけました。



「あ、あの、黒い頭巾のお侍さん…
本当はあなた様がこの村をお救いになられたのでは…
もしよろしければ、お名前だけでも…」

流浪人はいいました。

「…名乗る程の者でもないニャ…おそば、美味しかったニャ。
ここは日本一のお店だニャ…達者で暮らすニャ」

そう言い残して、黒い頭巾の流浪人は、どこかへ去ってしまいました。

とある村と家族を救った不思議な猫侍の昔話は、
今もその地域で語り継がれているのでございます。


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