〜おしゃれアルバム物語〜
猫メイドさんの憂鬱
番外編 3

別荘でお誕生パーティーをしよう!の巻

文:おぼろ
おしゃ画像作成:さとみさま

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「ちょっと出掛けてくるから留守番しててね」

三連休初日、お嬢様のお母様は、仕事から自宅に戻って来るなり、
小雨の降る中またどこかへ出掛けてしまうようです。

リビングのソファーでスマホゲームして遊んでいた妹さんは、せわしなく
バタバタしているお母様に尋ねました。


「ねえ何処かまた出掛けちゃうの?」


「忘れないうちに別荘行ってこなくちゃ。冬になる前に水道の凍結対策
やっておかないと後で大変だから」


妹さんはさっそく、一緒に別荘に行きたいと駄々をこね始めました。





「仕方のない子ねえ…べつにお泊りしに行く訳じゃないのよ」


こうして妹さんは、お母様の車で一緒に別荘に向かうことになりました。

妹さんは、助手席に座って、カーラジオのスイッチを入れました。

どうやらせっかくの三連休は、台風の影響で生憎の天気になりそうでした。





やがて別荘に着きましたが、相変わらず小雨がぱらついています。

お母様は傘をさして、別荘の裏手に回りました。
水道の元栓が別荘の裏手にあり、露天風呂もそこにあります。





「ふーん、こんなところに水道の元栓があるのかあ…」

「いずれはあなたがこの別荘を管理することになるかもしれないんだから、
しっかり覚えておきなさい」


お母様は、そういいながら水道の元栓をしっかりと締めて、次に水道管の
周りに布をグルグルと巻きつけました。


「これは何をやっているの?」

「冷え込んでも水道管が凍ったりしないように布を巻いておくのよ」

「ふうん…」

「…よし。こんなもんでいいかな」


このあと、傘の柄を脇に抱えながら、庭の草むしりなどして、
一時間くらい作業をすると、二人は車に戻って別荘を離れました。

妹さんは、お嬢様の家で下ろしてもらい、お母様は、妹さんを
車から降ろすと、今からまた仕事だといって、そのまま職場に
向かいました。

お母様に連休など無関係なのでした。

お嬢様の家には、ちょうどお友達がお邪魔していました。

二人で何か料理を作っている最中のようです。


「ねえ、これは何を作っているの?」


と、妹さんが尋ねると、


「今チョコケーキ作りに挑戦してるの」


と、お嬢様のお友達が言いました。

猫メイドさんは、足りない食材を買いに出掛けていて留守のようです。

面白そうなので、妹さんもケーキ作りに混ぜてもらいました。





妹さんは、お嬢様から、板チョコをドロドロに溶かす係を任されました。

三人でチョコケーキ作りに悪戦苦闘していると、やがて猫メイドさんが
買出しから戻ってきました。





「いちごがどこにも売ってなくて、探し回って疲れたニャ…」


猫メイドさんは、水滴のついたレジ袋を引っさげて戻ってくるなり、床に
ヘタり込んでしまいました。


「猫メイドさん、お疲れさまー!少し休んでていいよ〜」


お嬢様がクリームを泡立てながら猫メイドさんにそう言うと、少し横になって
休むように促しました。

猫メイドさんが引っさげてきたレジ袋の中を、お友達が覗き込んで言いました。


「うわー、おっきいいちご買ってきたんだね。高かったでしょう」


ソファーで横になりながら猫メイドさんが言いました。


「シーズンとっくに過ぎてるから安いいちごなんて手に入らないんだニャ」


そうこうしているうちに、妹さんのチョコが程よく溶けてきたようです。

完成したスポンジケーキの上に溶かしたチョコをかけて冷やし、クリームを
乗せると、だいたいチョコケーキっぽい格好になってきました。





最後に猫メイドさんが買って来たいちごを載せると、みんな一斉に歓声を
上げました。

そのときふと妹さんが尋ねました。


「ところでこのケーキって誰の?誰かお誕生日の人とかいたっけ?」


するとお嬢様が答えました。


「お魚のお姉さんが明日誕生日だそうだから、明日ウチにお招きしようって
話し合ったんだよ」

「ああ、そういうことかあ」


そのとき、妹さんはふと思いついたことをお嬢様に言いました。


「ねえ、うちの別荘でお誕生パーティーするってのはダメかなあ」


妹さんの大胆な提案に、猫メイドさんも、お嬢様のお友達も面食らい
ましたが、反応は肯定的でした。

しかし、お嬢様は考え込んでしまいました。

お嬢様も、それが可能ならそうしたいと思いましたが、お母様が許してくれるか
どうかわかりませんし、そもそもお母様のお車に頼らずに別荘まで行く手段が
思いつきませんでした。

いくらお嬢様といえどもタクシーを二台も呼んで別荘に行く訳にはいきません。

台風が接近してきていますので、天気も荒れることが予想されますので、結局
予定通り、お嬢様の家でパーティーをやろう、ということで落ち着きました。

―その日の夜





お嬢様のお友達は、お嬢様の家でお夕飯をお呼ばれしました。

食事をしながら、明日のパーティーのことを色々と話し合っていたら、
いつの間にやら夜の8時を過ぎてしまいました。


「もうこんな時間…。そろそろ帰らなくちゃ。じゃあまた明日」


お嬢様と猫メイドさんは、玄関先までお友達をお見送りました。

妹さんはソファーで居眠りしてしまって起きそうもありません。

お嬢様は、お母様に電話をして、妹さんをそのままお泊りさせることに
しました。

猫メイドさんは、食事の後片付けが済むと、テレビを見ていました。

お嬢様は、お風呂から上がるとすぐに明日のパーティー用の飾りを一人で
黙々とつくりはじめました。

猫メイドさんが、テレビを見ながらお嬢様のことを呼んでいます。


「ねえお嬢様、あれって別荘の近くにあった湖のことじゃないかニャ?」


猫メイドさんが見ている旅番組で特集されているのは、お嬢様の別荘から
少し降りたところにある湖、余雅湖でした。

ご当地グルメやレジャーが紹介され、番組の最後に、アクセス方法が紹介
されました。


「ニャ〜…意外とすぐ近くまでバスで行けるんだニャ。知らなかったニャ」


旅番組が終わると、CMを挟んで天気予報が始まりました。


『明日は曇りで、日中は時々晴れ、夜遅くなって雨が降るでしょう』


予報では、どうやら天気は一日持ちこたえそうな感じです。

お嬢様は、スマホで近所のバスの時刻を調べました。

お嬢様の家の最寄の駅から余雅湖方面に直接向かうバスはないみたい
でしたが、郊外の総合病院を経由すれば、本数は少ないですが余雅湖行き
のバスに乗り継げそうです。

お嬢様は、一か八かに賭けてみる決意を固めて、猫メイドさんに言いました。


「猫メイドさん、別荘に行っちゃおっか!お母様にこのこと内緒にしておいて
くれる?」

「もちろんだニャ」


お嬢様は、すぐさまお友達と、お魚のお姉さんにメールをして、パーティー
会場の変更を知らせました。

お友達も、お魚のお姉さんも大喜びで了解しました。


―翌日朝早く、お嬢様たちは、お魚のお姉さんと一緒に駅に向かいました。

駅にはお友達が一足早く来ていて、お嬢様たちに気が付くと、手を振りました。
お嬢様も手を振り返します。





「おはよー」

「おっはよ〜」


総合病院行きのバスは、時間通りにやってきました。
休日の早朝ということもあって、乗客はガラガラでした。

約30分くらいで、病院に着きました。ここで余ヶ湖方面に向かうバスに
乗り継げるはずです。

大きい病院で、バスの乗り場がたくさんあるので、のりばがよくわかりませ
んでした。

お友達と、お魚のお姉さんが、バスのりばと行き先を一つ一つ確認して
回っています。

猫メイドさんと妹さんは、待ち時間を利用して、近くにコンビニがないか捜しに
出掛けました。

お嬢様は、バスのりばを聞くために病院の受付に行きました。


「すみません、湖の方へ行きたいんですが、のりばは何番になりますか?」

「余雅湖行きですね、6番でお待ちください。もう間もなくバスが参りますので」

「はい、ありがとうございます」

「乗り遅れると次のバスは3時間後になりますので、お気をつけ下さい」


お嬢様が外に出ると、お魚のお姉さんが6番のりばでおいでおいでをして
いました。

ちょうど余雅湖行きのバスが到着したばかりのようでした。

あとは猫メイドさんたちが戻ってくるのを待つだけです。

お嬢様がバスの乗り口のステップから顔を覗かせ、時計を睨みながら、
妹さんたちが戻ってくるのをハラハラしながら待っていると、やがて妹さん
と猫メイドさんとが並んで駆けてくるのが見えました。


「はやく、はやくぅ!バス行っちゃうよ」

「ニャ〜あぶなかったニャ」





バスは定刻に発車しました。


「猫メイドさん何を買ってきたの?」

「パーティー用のクラッカーと鳥の唐揚げを買ってきたニャ」


バスは暫く市街地を走ると、やがて山間部にさしかかり、40分くらいで
湖に到着しました。





湖からは、15分少々歩いてお嬢様の別荘に向かいます。

天気は、心配とは裏腹に時折太陽が顔を出す絶妙なピクニック日和でした。

台風が近づいているとは思えないです。

お嬢様は言いました。


「暑くもなく、寒くもなく、ちょうどいい日和だね」


別荘に着くと、庭は小綺麗に掃除されていました。

昨日、妹さんがお母様と別荘を訪れた際、小雨が降る中、お掃除したばかり
なのでした。

とりあえず今日一日、雨の心配はなさそうですが、ゆうべの雨で庭がぬかるんで
いるので、パーティーはバルコニーですることにしました。

妹さんが別荘の裏に回って水道の元栓を開くと、水が出るようになり、
トイレや炊事場が使えるようになりました。

猫メイドさんたちがバルコニーでパーティーの下準備をしている間、お魚の
お姉さんやお友達には、温泉で寛いでもらう事にしました。





二人は大喜びです。

パーティーの準備のほうは、猫メイドさん一人では手が足りないので、
お嬢様も手伝いました。





「ねえ猫メイドさん、飾り付けとか適当でいいよ。どのみちあとですぐ
片付けなくちゃならないし、時間がもったいないから。お魚のお姉さんが
お風呂から上がったらすぐにパーティーを始められるようにしようよ」

「わかったニャ」


お魚のお姉さんたちが温泉から上がる頃には、だいたい準備が整いました。





パン!パン!パン!

クラッカーの音が森林に響き渡ります。


「誕生日おめでとー」

「ありがとー」


昨日、みんなで作ったチョコレートケーキにナイフを入れるのは、もちろん
お魚のお姉さんです。

頑張って作ったケーキでしたが、一人一切れづつケーキを配ると、
あっけなく全部平らげてしまいました。

あとは、猫メイドさんがコンビニで買ってきた食料と、家から持ち寄った
おやつで食いつなぎ、楽しくおしゃべりしていると、あっという間に正午を
過ぎていました。


「ええと、帰りのバスの時間って何時だっけ?」


お魚のお姉さんが、心配になってお嬢様に尋ねました。


「確か4時半がバスの最終だったと思ったけど…」


「じゃあさ、ここの片付けはあたしたちでやっておくから、妹さんやお嬢様
たちも温泉に入ってきなよ」


ここはお言葉に甘えて、猫メイドさんや妹さんも温泉で寛いでくることに
しました。

パーティーで使った食器をお魚のお姉さんと二人で洗っていたお嬢様。

猫メイドさんたちが温泉から上がると、バトンタッチしました。

今度は猫メイドさんが、お魚のお姉さんと洗い物を担当し、お嬢様は温泉で
寛ぎます。

妹さんがバルコニーのほうを伺うと、既にお友達がだいたい片付けを済まして
いましたので、残ったゴミの片付けをしました。


「たまにはこういうパーティーもいいよねえ」

「そうだね〜」


妹さんは、お嬢様のお友達とそんな会話をしていると、向こうでお嬢様が何か
叫んでいます。


「お風呂上がりましたぁ」


時計を見ると、時刻は午後2時を少し回ったところです。


「そろそろ支度して下りた方がいいかニャ?みんな少し観光もしたいニャ」


猫メイドさんがそう言うと、誰も異論はありませんでした。


「じゃあ、水道の元栓閉めてくるね」


妹さんが裏に回っている間に、猫メイドさんが戸締りを確認して、全員が庭に
集まったところで別荘を離れることにしました。


いよいよ外は雲行きが怪しくなってきましたが、雨はまだ降ってきません
でした。


「何とか天気が持ってくれてよかったね」

「おもしろかった〜」

「また機会があったらこういうの、やりたいね」


皆で口々に感想を言い合いながら、湖のほうまで降りて、湖畔を少し散歩して
いると、やがてポツポツと雨が降りだしてきました。

バス停の近くの喫茶店でお喋りしながら雨宿りしていましたが、結局、お天気は
その後回復することはなく、バスの時間が来てしまいました。

バスに乗ると、皆、疲れたのか口数も少なくなり、気が付くと全員爆睡でした。





先に目が覚めたのは、猫メイドさんでした。

時計を見ると、かれこれ30分くらいバスに乗っていますので、そろそろ総合病院
に着く頃です。
総合病院でバスを降りなければ、バスは通過してしまうので、大変な事になります。


「お嬢様、起きるニャ。そろそろ降りるニャ」

『次は、総合病院、総合病院、お降りのお客様はございませんか?』


すかさず猫メイドさんは降車ボタンを押して、皆を起こして回りました。

総合病院でバスを降りると、雨は一時的に上がっていました。

今度は最寄りの駅まで向かうバスに乗り換えます。

時刻表を見ると、バスは10分前に行ったばかり。
次のバスまで50分近く間が開くようです。


「接続悪いね〜。どうする?」


と、お嬢様のお友達はぼやき節です。

次のバスを待つと、最寄り駅に到着する頃には6時半を回ってしまいそうです。

そこで、どこかにレストランでもやってないか探そう、ということになりました。

すると猫メイドさんがいいました。


「今朝コンビニ探してた時にお寿司屋なら見掛けたニャ」


お魚のお姉さんが言いました。


「じゃあさ、アタシがお寿司おごるから、みんなでそこへ行こう!
アタシのお誕生会を開いてくれたお礼ってことでさ」


と、いうことになりました。

お魚のお姉さんからの提案に、一同大喜びです。

特に喜んだのは猫メイドさんでした。





「アニャゴもう一つ頼んでいいかニャ?」


幸せそうにお寿司を食べる猫メイドさんに、一同和まされっ放しでした。


「猫メイドさんってさ、ウナギとかアナゴとか、長いお魚が大好きだよね」


お魚のお姉さんが、思わず言いました。

お魚のお姉さんの隣でそれを聞いたお嬢様は、こう言いました。


「ウナギやアナゴだけじゃなくて、フグも大好きなんですよ。猫メイドさんて、
ああ見えて高級魚に目が無いグルメ舌なんですよ」

「…何か言ったかニャ?」


猫メイドさんにしっかり聞こえてしまったようです。

お寿司屋を出ると、外はもう薄暗くなっていました。


「陽が短くなったよね〜」


思わず妹さんが実感を込めてつぶやきました。

バスに乗って、最寄りの駅に着く頃には、もう辺りは真っ暗になってしまい、
弱い雨がシトシトと降っていました。





「今日は面白かった〜!じゃあまたね。おやすみぃ」


ここでお嬢様のお友達とはお別れです。

お嬢様と、妹さんと、猫メイドさんと、そしてお魚のお姉さんの4人は、
折り畳み傘をさしながらお嬢様の自宅近くまで徒歩で帰りました。


「それじゃあ、お疲れさま〜今日はありがと〜おやすみ〜」


お嬢様の自宅の前で、お魚のお姉さんと挨拶してお別れしました。


3人でお嬢様の自宅に向かうと、何やら見慣れた赤い車が玄関前に見えます。


「お嬢様…もしかしてこれ、マズイ展開かニャ?」


どうやら、お母様が来ているっぽいのです。


「…ただいまあ…」


妹さんがそうつぶやいて玄関をゆっくり開けると、お母様が玄関前で腕組みをして
仁王立ちしていました。





「おかえり。遅いお帰りですね」


そうお母様が言いました。


「お母様の顔、ひきつってるニャ…」


猫メイドさんがお嬢様にそう囁きました。

このあと、お嬢様と妹さんは、小一時間も叱られてしまいました。

更に罰として、お嬢様も、妹さんも、おこづかい一カ月間ゼロです。

猫メイドさんも例外ではなく、監督の不行き届きで減給の罰を与えられた
のでした。

ただし猫メイドさんの最低限のお仕事の成果は認めてもらって、3日間の
減給で勘弁してもらいました。


おわり


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