〜おしゃれアルバム物語〜
猫メイドさんの憂鬱
完結編


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…………。

猫メイドさんは、海外留学する夢を見てからというもの、
何かの都合で、自分がお嬢様の元から離れることに
なった場合の事を、ふと考えるようになりました。



お料理って楽しいね


暇さえあれば、猫メイド協会に加入している猫メイド
さんを調べたり、お嬢様に少しでも家事に慣れて
もらおうと、お嬢様と一緒にお料理を作ったりもしました。



確かこの辺だったニャ…

そんなある日のこと、猫メイドさんは、家事の合間に
お嬢様のお母様に会いに行きました。

お嬢様のお母様は、ビジネス街にある背の高いオフィス
ビルでおしごとをしています。

猫メイドさんは、お嬢様のお母様に、忙しいおしごとの
合間を縫って、話を聞いてもらいました。



応接室で待っててね

ひさしぶりに里帰りしたい旨をお伝えし、その間、
お嬢様のお世話をしてもらう、一人の猫メイドさんを、
お嬢様のお母様に紹介しました。

「へええ、この子が猫メイド協会に加盟してるお友達?
可愛い子ね。わかったわ!」

お母様の反応は上々でした。

こうして、猫メイドさんは、GWの疲れを癒すため、
お嬢様のお母様から特別に一週間の休暇を頂いて、
久しぶりに実家に帰って羽を伸ばせることになりました。

元メイド長の猫メイドさんのお母様には、
猫メイドさんをまた家から追い出したりしないように、
お嬢様のお母様から頼んでいただきました。

そして、猫メイドさんの休暇中は、臨時のお嬢様のお世話役
として、新たに猫メイドさんを雇っていただくことになりました。



こんばんわ

猫メイドさんが里帰りに出発する前日の夜、
お互いの自己紹介を兼ねて、お嬢様と、代わりの新しい
猫メイドさんと3人で、食卓を囲んで雑談を交わしました。

「まだまだ半人前ですが、どうかよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」

猫訛りが無く、おしとやかそうな新しい猫メイドさんという
ことで、親近感を感じたお嬢様の反応は上々でした。

「ピンポーン」

誰かが来たようです。

猫メイドさんが玄関から覗くと、いつも市場で売り残ったお魚
をおすそ分けしてくれるお姉さんが立っていました。

「おしゃかニャのお姉ニャンだニャ♪」



こんばんは〜


近所の魚市場でアルバイトしている大学生のお姉さんです。

「こんなにたくさん貰っていいのかニャ?」

「まだ新鮮なイワシだし、型がよくて勿体ないから食べてね!
それじゃあ、おやすみ〜」

猫メイドさんはお魚がいっぱい入った袋を抱えてお部屋に
戻ってきました。

「型の良いイワシをこんなに貰ったニャ」

せっかくなので、急遽、今夜の夜食にイワシの塩焼きを一品
加えることになりました。

猫メイドさんがイワシを持ってキッチンに入ろうとすると、
新しい猫メイドさんが、スッと立ち上がって、言いました。



何匹塩焼きにしましょうか?

「私にも手伝わせてください。明日からここで雇ってもらう
んだし、少しでもおしごとに慣れておかなきゃ」

新しい猫メイドさんの初仕事は、イワシの塩焼きを作ることから
始まりました。

程よく焼きあがった塩焼きをお嬢様にお出しすると、
おいしいと言って、喜んで食べてもらえました。

新しい猫メイドさんの初おしごとは、ひとまず大成功でした。



一週間宜しく頼むニャ

翌日の朝、猫メイドさんは、通勤ラッシュを避けて始発の電車に
乗るため、まだ暗いうちにお嬢様の家を発ちます。
駅までは、お嬢様のお母様が、お車で送ってくださるようです。
お嬢様は学校があるので、起こさないようにしました。

「ゆっくり休んできてください」

「お嬢様のこと、よろしく頼むニャ」

車の運転台のほうから、お嬢様のお母様も一声掛けました。

「じゃあ、娘をよろしく頼むわね」

「はい。いってらっしゃいませ」

猫メイドさんを乗せたお車は、まだ薄暗い朝靄の中に消えました。

こうして、お嬢様と、新しい猫メイドさんとの生活が始まった
のでした。

ところが…

「申し訳ありません」「申し訳ありません」



本当に申し訳ございません…お嬢様

猫メイドさんの御指名を受けて、後を引き継いだ
新しい猫メイドさんは、失敗続きでお嬢様に迷惑ばかり
かけてしまっていました。

まだお嬢様のもとでおしごとをするのに慣れていないのに
加えて、元執事の父と、元メイド長の母との間に生まれた
サラブレッド猫メイドさんの特命を受けてお仕事を任された
というプレッシャーに押しつぶされそうで、なかなか思い通りに
おしごとが出来ないでいたのでした。

「お願いだから鈴を首につけておしごとしてちょうだいって言っても
ボーッとしてて付け忘れるし…困ったお手伝いさんだなあ」



ふぅ…困ったなあ、どうしよう


お嬢様は困惑しつつも、一週間の辛抱だと思って、
大目に見てあげました。

お嬢様は近所の公園で、ちょうど犬の散歩中だった
お魚のお姉さんに会いました。

そこで、お嬢様は少し相談に乗ってもらいました。



あら、こんにちは


「心配しなくても直に慣れてくれるわよ。大目に見てあげて
正解だと思うけどなあ」

お魚のお姉さんは、そう言いました。

一方、翌日になっても、新しい猫メイドさんは、色々と失敗ばかり
し続けて、お嬢様に迷惑をかけていたのでした。

それでも何とかお嬢様を学園に送り出し、やっと一息つく時間に
なりました。



………ふぅ…

居間のソファに腰かけて、大きな溜息をついたその時
でした。

「やれやれ、見ちゃいられないよ!クックックッ」

そんな猫メイドさんに見かねた地縛霊(魔女)が、とうとう姿を現しました。



クックック…

「だ、誰なんですかあなたは」



けーさつ呼びますよ!

「アタイはこの部屋にもともと棲んでる者さ。
ウジウジしたアンタが見ちゃいられないんだよ。
精神魔法をかけてやるからシャキっとしな」

「セイ!シン!」

魔女が呪文を唱えると、新しい猫メイドさんは、魔法にかかってしまいました。

「フフッ…せいぜい頑張りな」

そう言って魔女は姿を消してしまいました。

猫メイドさんは、何だか急に自信がみなぎってくるような気がしてきました。



何だかやる気が出て来ました

それからというもの、重荷になっていたプレッシャーはすっかり無くなり、
まるで人が変わったかのように、おしごとを上手くこなすようになりました。



今日はしっかりやれてるみたい…

お嬢様は、新しい猫メイドさんが、やっとおしごとに慣れてきたのかな、
と思いました。

でも、テキパキとおしごとがこなせられるのは、所詮は魔法の力。
新しい猫メイドさんは、どうしてもそのことを意識してしまいました。





「魔法が解けてしまえば、きっとまた以前のように失敗ばかりしちゃうに
違いない。これでは尊敬する猫メイドさんに近づけない…」

新しい猫メイドさんは、魔法の力に頼る自分と、プレッシャーを跳ね除けて
自力で頑張ってきた猫メイドさんとを比べて、考えこんでしまいました。

「おしごとは出来るようになったけど、
魔法の力に頼っているようではいけないわ。自力で何とかしなくちゃ」

新しい猫メイドさんは、思い切って地縛霊さんに言いました。



はあ??何だって

「魔女さん魔法を解いてください。やっぱり自分の力で何とかしようと
思うんです」



それでいいのかい?

「そうかい。アタイみたいに追い出されちゃっても知らないよ!
それでもいいんだね」

魔女は、魔法を解除する呪文を唱えました。





「カイ!ジョ!」

新しい猫メイドさんにかけられた魔法は解けました。

「おしごとが上手になる魔法をかけてもらったわけじゃない。
落ち着けばちゃんとおしごとが出来たのだから、
魔法の力に頼らなくても、必ず出来るようになるはず…」





それからの新しい猫メイドさんは、これまでとは打って変わって、
魔法が無くても落ち着いておしごとをこなせるようになりました。

そしてあっという間に一週間が経ちました。

猫メイドさんが、実家からお嬢様のもとへ戻って来る日が
遂にやって来たのでした。



ピンポーン!

「お嬢様、この子を使ってみてどうだったニャ?」

いきなり猫メイドさんに問われ、お嬢様は返答に詰まってしまいました。
最初の二日間のことがあったからでした。



えーと、うーんと…

「え?あ、う、うん…うーんと、まあ、合格かな」

お嬢様は、つい気を遣って、そう答えてしまいました。



ニャ♪ホントかニャ!


「そうかニャ!よかったニャ」

もしまた何かあっても、これからは安心して自分の代わりを任せられる。
猫メイドさんは、ホッとしたようでした。

すぐさま猫メイドさんは、お嬢様に気に入られたことを、新しい猫メイドさん
に教えてあげました。

そんな様子を見ていると、お嬢様は、これでよかったんだと思わずに
いられませんでした。

そして翌日から、猫メイドさんは、おしごとの引継ぎをし、
その日の晩に、新しい猫メイドさんは、無事任期満了で、故郷に帰ることに
なりました。

お嬢様のお母様が、自宅までお車で送って差し上げるようです。



いつかまた宜しくお願いします


「本当にお世話になりました。」

「こちらこそ助かったニャ。また何かあった時は宜しく頼むニャ」

「はい、ぜひ任せてください。喜んでお引き受けします」

一週間のお勤めが終了し、新しい猫メイドさんは、とても自信に満ちた、
清々しい表情で帰っていきました。




「やれやれ…最後に
アタイらしくもないこと、しちまったね」



おわり


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やっと撮影が終わったニャ!

フィナーレだニャ!

みんなお疲れ様ニャ!



おまけのこぼれ話

「猫メイドさんの鈴リボンチョーカー着用について」

猫メイドさんの憂鬱の回で、実家に帰ってしまった猫メイドさんが
お嬢様のもとへ戻ってきた辺りから、猫メイドさんは
鈴チョーカーを着用するようになりました。

猫メイドさんが鈴をつけていれば、猫メイドさんがお嬢様の
お傍でお仕えしている場合、鈴の音でわかりますよね。

お嬢様は、猫メイドさんが突然いなくなってしまったり、
遠くに行ってしまう夢を見てうなされたりしてからというもの、
また急に猫メイドさんがいなくなってしまうのではないかと、
いつも不安がっておりました。

そんな不安を少しでも和らげて差し上げようと、
猫メイドさんは気を利かせて、お嬢様のお家でお仕えしている間は
自主的に鈴チョーカーを着用するようになったのでございます。

でも、猫メイドさんであっても、時にはボーッと考え事をすることがあり、
着用するのを忘れることがあったようです。
(完結編の一番最初のシーン)

新しい猫メイドさんに(制服の一部として)鈴チョーカーを着用するように
お願いしたのは、猫メイドさんではなく、お嬢様でした。

猫メイドさんの一週間の休暇をきっかけに、お嬢様は、またあの時の事を
思い出してしまい、急に寂しくなってしまったからでした。

しかし、お嬢様がお願いしても、新しい猫メイドさんは、当初は鈴チョーカーを
着用してくれませんでしたよね。

それはなぜでしょうか。

新しい猫メイドさんは、おしごとのプレッシャーで頭が真っ白になってしまって
いて、人の言う事が頭に入ってこなくなってしまっていました。

それも理由なのですが、理由はそれだけではありませんでした。

鈴チョーカーの着用が、一体何のためなのか、新しい猫メイドさんには
知る由もありませんでした。

ですので、鈴チョーカーを着用するのは単なるおしゃれ、即ち、制服というよりも、
ファッションとの認識だったので、当初は着用してくれなかったのでございます。