家族会議

  兄達が、次々と離れの部屋に向かっている。
 「何の話?」長兄に聞くと
 「お前が子育て下手だから、その話だ」
 ひどい、と思ったが、長男が情緒障害になった理由はだれも知らないんだから、仕方ないなと思い直しついて行った。
  話は全く違っていて、母が初婚の家に「長男だから」と取られてしまったその人が
 奥様とご一緒に母に会いに来られたようだ。もう、すでに帰られた後だったが。
  母にしてみれば、彼の思いは充分解かっていながらも、ここまで育ててくれた継母に対する感謝の思いもあるだろうし、
 今後の彼の為を思えば「優しい母」で接するわけにはいかなかっただろうと、今の私は思う。
  でも、母の為には、ちゃんと結婚していて奥様も一緒に来て下さったのは、安心しただろうし。
 心の切り替えになってよかったんじゃないかなと思う。赤ちゃんのまま心の中では成長できず、悲しい思い出だったので。
  母自身再婚の時、父の妹の子、金恵さんが大事に育てられて中学生になっていた。母は金恵さんにとって二人目の継母。
 金恵さんの写った写真を見たことがある。両親の間に、わんぱくそうな三・四歳の長兄。
 そして取り巻く父の生徒たちの端に、凛々しい白い海軍服。
  複雑な思いの交錯の中で、母は生きてきたんだなあ、と思う。
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